巡回

「...マジで椅子出しぐらいしかやることなかったな」


女子に差し入れを届けた後、秋葉と一緒に会場の設営を行うことにした。


ただ俺たちがつく頃にはもうほとんどギター部の部員が終わらしていてくれて俺たちは結局椅子出しぐらいしかやることがなかった。


「で、次は全クラスを回るんだっけ」


「はい、一クラスずつチェックしていきます」


ガチでめんどい。


「でもその前にまずは赤条寺会長の教室に行きましょう」


まぁそりゃそうなるわな。


紅愛が所属しているクラスに行くと


「...ずいぶんクオリティが低いお化け屋敷だな」


もうほぼお化け屋敷ができているといった感じだが、狭すぎる。


ダンボールで作っているので仕方ないと思うが。これは屋根がついている滑り台と同じぐらい狭いぞ。


「あ、澪未矢先輩と秋葉さん、お疲れ様です」


「お疲れ様じゃないでしょ!なんで会長であるアンタが生徒会室に来ないの?」


「私は見ての通りお化け屋敷の準備で忙しいのよ」


いや、ずっとスマホいじっていただけじゃん。


「なぁ紅愛、もうこれは完成してるのか?」


「もう8割完成していると言ってもいいでしょう」


「これで8割か...」


多分紅愛は芯珠を怖がらせるのを目的としているが、これじゃあさすがの芯珠も驚かないぞ。


「8割完成っていうことは、生徒会に割く時間もありますよね?」


「ええ、ちょうどこれから生徒会室に行こうとしていたところよ」


嘘つけ。


「じゃあ把握全クラスを見回りに行くのでついてきてください」


「...本当に全クラスを見回らなくちゃいけないの?」


「アンタが予定表にそう書いてんでしょうが!」


「まぁ確かに書いたのは私だけどあれは冗談っていうか」


いろいろと生徒会長としてあり得ない言動がとれたな。


「ちゃんと自分で言った言葉には責任を取りなさい」


「...ねぇ先輩。なんで生徒会長である私が説教されなくちゃいけないんですか?」


「俺に訊かれても」


今回は100%お前が悪いが。


「ほら、二人ともさっさと行きますよ」


「秋葉さんはなんであんなにやる気があるんでしょうか」


それは俺も謎だった。


「もしかして私との百合展開を期待しているとか...//」


なんでそういう発想に至る。


「でも私はもう澪未矢先輩と駆け落ち宣言されたんですよね」


「それ、栄那の前で絶対に言うなよ」


それから俺たちは本当に全学年のクラスを一つ一つ回った。


秋葉は何か規則違反をしている点はないかと一クラスずつ隅々まで調べた。


正直俺と紅愛は全くやる気がないので、ほとんど秋葉一人に任せていた。


ただ、何故か栄那の2年A組だけは紅愛も入念にチェックしていた。


どれだけあら探しがしたいんだよ。


そんな二人を眺めているときに


「あら、両手に花とはずいぶん贅沢な状況ですわね澪未矢さん」


と案の定栄那に声を掛けられた。


栄那のクラスの出し物はクラスの生徒一人を指名して一緒にプリクラを撮るというものだ。


だがなぜか栄那は指名できないらしい。


「わたくしは澪未矢さん専用ですわ」


それっていいの?


まぁ栄那がやる言えばOKとなるのがこの学校だ。


とりあえず2時間ぐらい変えて一通り全クラス回った。


「一クラスも違反がないとは。やっぱりこれも私が生徒会長になったのが原因ですかね?」


それだけは断じてない。


「...俺もう帰っていい?」


「何言ってるんですか?だめに決まっているでしょう?文化祭準備期間は生徒会は最後まで残らなきゃダメなんです」


「...誰が決めたの?」


「もちろん私です」


なんでさっきまでめんどくさそうだったのに最後まで居残るのは満更じゃないっていう顔してるんだ。


「ところで文化祭には神楽さんは来るんですか?」


「ああ、おそらく間違いなく来るだろうな」


妹に女装姿を見られるほど屈辱的なことはない。


というかこのての話題は秋葉がついていけないからやめたれ。


「ところでなぜ秋葉さんのクラスは牛丼屋なのかしら?」


「...それついさっき夜崎にも説明したけどクラスの男子が発案して賛成票が多かっただけ。それだけよ」


だからなんで呼び捨て?


「そうだとしても文化祭の出し物が牛丼屋って言うのはねぇ」


紅愛も呼び捨てを注意してくれよ。


「何、別にアンタには関係ないでしょ?」


「確かにそうだけれども、牛丼屋に反対意見があまり出なかったっていうのはねぇ。秋葉さんのクラスの平均IQが容易で推測できるわ。


「...喧嘩売ってるの?」


このように三人が同じ空間にいるとすぐ喧嘩が勃発する。


早く準備期間終われと強く願うばかりであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る