選択の重要性

「先輩、くっつきすぎです」


「で、でも一つのベットで一緒に寝るんだからこれぐらい密着させても」


「このベットは大きいのでそんなにくっつかなくても十分スペースがあります」


ぐぬぬぬ...


赤条寺には珍しく正論で返してくる。


確かにこのベットは4人ぐらいで寝るのがちょうどいいぐらいの大きさだからこんなに密着しなくても十分スペースはある。


「...先輩まさか期待してます?」


「な、何のことかな?」


なんで今日に限ってこんなに鋭いんだよ!


「まぁ後輩に欲情する先輩はどうかと思いますけど...」


言いながら赤条寺が馬乗りになってきた。


「えーっと、なにを」


「何をって首絞めプレイしたいんでしょ?」


「え、く、首絞め?」


「?何驚いてるんですか?いかにも先輩が好きそうなプレイじゃないですか」


確かに首絞めプレイも一度はしてみたいと思ったが。


「どうせ先輩みたいなマゾはネットのヤンデレシュチュエーションボイスの台本とか読んでるんでしょ?」


「...読んでます」


こればかりは本当に読んでる。


「安心してください、私も読んでますから」


うん知ってた。


「よく”浮気がばれてヤンデレ彼女に首絞めされる”とかあるでしょ?ああいうのにあこがれません?」


「...あこがれます」


「ってことでOKですよね?」


「いや、ちょっと待て」


「はい?」


「ああいうのは相手がヤンデレだから興奮するものであってそうじゃないなら何にもロマンがないものになるんだ」


俺の予想だと赤条寺はヤンデレキャラじゃない。


ただの小悪魔系女子だ。


小悪魔系の首絞めもありだが、やはりヤンデレ+首絞めの方が俺としては興奮する。


「じゃあマゾな先輩のために私がドSヤンデレになってあげましょうか?」


「...いや、やめときます」


赤条寺がドSヤンデレなんかになったら歯止めが利かなくなりそう。


そのあともくだらないトークを繰り広げたが、だんだん眠気が襲ってきたこともあり会話も減ってきた。


「...ねぇ先輩」


「なんだ?」


「...このまま二人で駆け落ちしません?」


「...は?」


今なんて言った?


「えーっと、それってつまり」


「はい、私にNTRれません?」


「.......」


まさかここで逆NTR展開が来るとは。


「先輩も栄那さんといやいや婚約させられてるんでしょ?」


確か神楽が前にそんなことを言っていた気がする。


「本当は栄那さんのことなんか好きじゃないんでしょ?」


どうだろうか?


プレイヤーとして、俺は栄那と赤条寺のどちらを選ぶだろうか?


「......」


正直に言うと今は赤条寺に気持ちが傾いている。


なんだかんだ言って赤条寺と過ごす時間が多かったし、今ではこうして一緒のベットで眠ろうとしている。


もし俺がただのプレイヤーとしてなら今すぐに赤条寺を選んでいただろう。


「ただ...」


ただ今は俺はただのプレイヤーではなく、実際にこの物語の主人公になっている。


主人公としてここで無責任でNTRれるというのも死亡フラグな気がする。


「今はまだ駄目だ」


凄いヘタレぶりだが俺としては人生がかかっている。


一つの選択で死に至ることもある。


そんな身としてはここですぐに返事をするわけないは行かない。


もし今赤条寺と駆け落ちしたとしても、おそらく待っているのはBADENDだ。


「”今”はということは私にもチャンスが残されているわけですよね?」


「ああ、正直今赤条寺への俺の好感度は栄那よりも高いと思う」


「......」


「でも、だからこそだ。今ここで駆け落ちなんてしたりしてもどうせ成功しない。俺は絶対夜崎雫の命令から逃げられない」


実際はそうとも限らないが。


「今の選択肢で、これからの赤条寺とともに過ごす時間、結ばれるかもしれない可能性を捨てたくないんだ」


「......」


赤条寺は黙ったまま俺の話を聞いている。


「...やっぱり先輩はヘタレですね。ハーレム系主人公に匹敵するぐらいのヘタレぶりです」


「ああ、そうだ。俺はエロゲ主人公と同等ぐらいのヘタレ野郎だ。だから」


「だから?」


「今はこれで我慢してくれ」


「”これ”とは?」


「お休み、紅愛くれあ


「!?」


紅愛が目を見開く。


やめろ、俺だって恥ずかしいんだから。


「はい、おやすみなさい。澪未矢先輩」

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