家族の写真

「なんかこのカレー美味いな」


「当然でしょ?私の手作りなんですから」


結局赤条寺も器用なんかい。


美味しすぎてすぐに食べ終わってしまった。


「「ごちそうさまでした」」


赤条寺が洗い物をしている間に部屋の探索を再開した。


「AVの一つや二つあるだろ」


AVを求めてあちらこちら探す。


「ベットの下にもないか」


親に見つからないようにベットの下に隠すというのが定番なんだがな。


ちなみにベットで丸々一部屋使ってある。


俺のベットにも言えることなんだが、絶対このベット一人だけじゃ大きすぎるだろ。


「にしても本当に私物少ないよな」


中央の部屋には一応大きい本棚があるんだが、どれもこれも真面目な学問系の本ばっかだな。


しかも胸糞悪いのがほとんど虐待に関する本だ。


もしかして将来赤条寺は児童養護施設とかで働きたいのか?


訊いてみたいのはやまやまだが。さすがに今訊くのは非常識が過ぎるな。


「ん?これは」


ふと、本棚の端の方に飾ってある写真が目に入る。


「これは...赤条寺?」


その写真には大人斗思われる男女二人と、その二人の真ん中に幼き頃の赤条寺が映っていた。


「赤条寺にもこんな頃があったのか」


写真の赤条寺はとても幸せそうに笑っていた。


多分この写真をネットのロリコンどもに売ったら凄い値段になりそうだ。


「こんなに明るくてかわいい子が、なんであんなのに成長を」


「何か言いました先輩?」


真後ろから声がした。


「えーっと、今の聞いてた?」


「いえ何も?先輩が幼女を見てニヤニヤしている姿しか分からなかったです」


絶対気づいてるな。


「それよりこの二人はタクシーの中で言っていたお前の両親なのか?」


「...ええ、そうです」


赤条寺が答えずらそうにつぶやく。


これまさか今訊いちゃいけないこと?と不安になる。


「その写真はとても大切なものなんです」


「この写真が?」


失礼だが、家族が幸せそうに笑っている普通の写真だと思うんだが。


「この写真だけですよ。あの二人が私のことを家族として認識してくれた写真は」


つまり当たり前に家族が笑っている写真がこれぐらいしかないということか。


「これはこの近くの公園で撮ったものなんです」


そういえばタクシーに乗っている途中にこんな公園を見たな。


「懐かしい。あの時は家族としてしっかりと私のことを愛してくれていました」


タクシーで見せた表情と同じように、赤条寺はどこか寂しそうな顔でそう言う。


「悪い、この場で訊くようなことじゃなかったな」


「いいんです。もう過去のことなんですから」


「赤条寺...」


「それに、今思えばこの写真も私の勘違いかもしれません」


「勘違い?」


「私が勝手にこの二人のこの写真での笑顔は自分を家族として認識してくれていることから来た笑顔だと思っていましたが、今思えば愛する二人が一緒の空間にいられることへの微笑みだったのかもしれません」


「...それは違う」


「え?」


「少なくても俺にはこの写真の二人の笑顔はお前のことを想ってのものだと思うぞ」


「何を根拠に」


「お前を含めたこの写真の全員が同じような笑みをしているからだ」


「!?」


「もしお前の解釈通り、お前のことなんかどうでもよくて二人だけの笑みだったらここまでお前と笑顔が被ることはないだろう」


「......」


「でも少なくても俺にはこの3人が全員同じ笑みを放っていると思うぞ」


「先輩...」


赤条寺が泣きそうな瞳で俺の方を見上げる。


「...っ」


何それ反則。


そんなうるうるさせた瞳を見せられたら思わず抱きしめて口付けをしてしまいたくなる。


「よかったですね先輩」


「え?」


「もしこれがエロゲだったら私の先輩への好感度がカンストして即ハッピーエンドですよ」


それはなかなかのクソゲーだな。


「でも本当に今の先輩への好感度は限界突破しているので今日は一緒にベットで眠りましょう」


「...まさかこれは」


今度こそエロゲ展開来るか!?


俺は久ぶりに興奮しながら寝る準備をした。

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