タワマンの中

エレベーターに乗り最上階に着く。


「最上階は部屋が少ないんだな」


「家賃が高すぎて私みたいな上級国民ぐらいしか住めないですからね」


赤条寺。すまないが本当の上級国民は成陸学園なんかに入学しないぞ。


「さ、先輩。お入りください」


「...ああ」


赤条寺が何やらドアに暗証番号みたいなのを打ち、部屋のドアが開く。


「どうです?片付いているでしょ?」


「確かに」


いや、それ以外にもっと言うことあるだろ。


まず一部屋一部屋が広い。


デカい広場みたいな感じだ。


「よくこんなにスペースがあるな」


「さっきも言いましたが最上階は部屋が少ないんでスペースが取れるんですよ」


「へぇー」


適当に返事をしつつ、早速部屋の探索を始める。


「ここは何LDKなんだ?」


「4LDKです」


社会経験がないからそれが狭いのか広いのかよくわからない。


「まぁここが中央ですね」


「ここ以外の部屋は狭いのか?」


「先輩の屋敷の部屋よりは大きいですけど」


ちょくちょく煽りを入れるな。


「この大きい扉は何なんだ?」


部屋の隅の方にある謎の扉を開けてみる。


「...これは」


そこには俺の屋敷の露天風呂に引けを取らないほどきれいでおしゃれな風呂があった。


「今先輩、まるでラブホの風呂みたいって思いましたね?」


「思いました」


風呂全体がピンク色とか絶対ラブホを意識してるからな。


「ちなみにこれは私が模様替えしたんです」


「...知ってる」


タワマンの風呂がこんないやらしい色をしているはずがない。


「トイレは普通だな」


ユニットバスではないが風呂の近くにトイレがあった。


「高級ホテルのトイレって感じだな」


赤条寺のことだからトイレも何かしら仕掛けがしてあると思ったのだが。


「どうしたんです先輩?そんなにトイレを凝視して。もしかして溜まってるんですか?」


「......」


正直に言うと溜まってる。


「そういえば今日の夕飯はどうしますか?」


「そうだな。最近は高級なもんばっか食っていたけどそろそろ以前みたいな粗末なものが恋しくなってきたな」


「...先輩はずっと屋敷で暮らしてきたんだから庶民の食事なんて分からないのでは?」


「あ」


失言した。


以前というのは夜崎澪未矢じゃない”俺”の情報だった。


「先輩。前も言いましたけどそうやって下民どもを見下すのはよくないですよ」


よかった。気づかれなかった。


てか言い方からしてお前の方が見下しているだろう。


「ほら先輩、窓から下民どもの様子が見れますよ」


今すぐスマホの録音機能をONにして学校にばら撒きたいな。


「にしてもこうしてみるとここら辺って意外と都会なんだな」


エロゲの舞台って大体都会だよな。


「で、結局夕飯はどうするんですか?」


「そうだな...ここは無難にカレーとか?」


「...ヘタレですね」


カレーのどこにヘタレ要素があるんだよ。


「赤条寺って料理とかできるのか」


「...先輩最近妙に煽りが上手くなってきましたね」


俺としては赤条寺は意外と不器用設定とかがいいが。


このエロゲのほとんどのヒロインたちは器用そうだからな。


「まぁカレーならすぐにできるんでそれまでこのPCでアダルトサイトとか見ていてください」


検索履歴が残らないなら本当に見ていたかもしれない。


「まてよ...このPCは赤条寺のだからあいつが普段なに検索しているのかが分かるな」


俺は早速WEBサイトを開く。


「あ、一つ言っておきますが私そういうのはそのPCでは見ません」


「え?」


「私のPCがその一台だけとでも思ったんですか?」


そう言われてみれば前に赤条寺がゲーミングPCを4台ぐらい持ってきた気が。


「クソッ」


じゃあこのPCの検索履歴には何も残っていないのか。


「でも一応」


一応WEBサイトの検索履歴は見ておこう。


「えーっとどれどれ...え」


なんか俺のスマホの検索履歴と同じようなワードがいっぱいでてきたぞ。


「ガッツリ検索しとるやないかい!!」

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