肝試し
「え、栄那様。やっぱりおやめになりませんか?」
「まさか夜崎家に忠誠を誓っている芯珠さんとあろうお方がこんなことにビビっていると?」
「い、いえ、そういうわけでは」
「それは違いますよ七桜さん。芯珠さんはギャップ萌えを狙ってるんです」
「ギャップ萌えとは...?」
「いつもクールキャラであるメイドがそのキャラを崩し、大胆にも怖がる仕草をして普段とのギャップを見せることで澪未矢先輩を堕とす作戦です」
「...芯珠さん。わたくしの許嫁である澪未矢さんにそんな色仕掛けを行ったらどうなるか分かりますよね... ?」
「私は澪未矢様に色仕掛けを使おうとも、ギャップ萌えを狙おうとも思っていません」
「そうですか?じゃあただ怖がっているだけということですか」
「こ、怖がってなどいません」
「......」
とりあえずなぜ今このような会話をしているとなると、今日の朝
「そうだ、皆様。わたくしあまり庶民の遊びは知らないのですけれど、どうやら夏に肝試しというものを行うそうですね?」
いきなり栄那がそんなことを話始めた。
「肝試しですか。現に私も今までそういった遊びはやったことがありませんでした」
赤条寺がやっていないのは少し驚いた。
こいつはそういう心霊系には全く動じなさそうだが。
「先輩は...まぁ聞かなくてもそのヘタレぶりを見るとやったことがないみたいですね」
”俺”はやったことがないが夜崎澪未矢は分からんぞ。
「どうやら皆さん肝試しを行ったことがないみたいですわねぇ」
芯珠もやっているとは思えない。
「なら決まりですわね」
「...決まりとは?」
「そんなの肝試しをすることに決まってますわ」
「...はい?」
このメンツで肝試しをするということか?
それはそれで面白そうだが、ここら辺に有名な心霊スポットなんてあるのか?
エロゲとホラゲはあまり結び付かないから、心霊スポットまで設定されているかは謎である。
「それは面白そうですね。私も参加したいです」
予想通り赤条寺も参加する。
「じゃあ俺も参加しようかな」
特に断る理由がないので俺も参加する。
ていうかもしここで断ればそのあとが怖い。
「もちろん芯珠さんも参加しますわよねぇ?」
「え?」
「え?じゃありませんわ。芯珠さん以外に誰が車を運転できるというんです?」
「栄那、車で行くってことはもう目的地は決めているのか?」
「ええ。この奥の方にどうやらこの屋敷の奥に山がありその中に大きな神社があるそうですわ」
山の中の神社か。
結構本格的だな。
「栄那様、つまり山の中を車で移動するということですか?」
「ええ、そうですわ」
「そ、それはちょっと危険なのでは...?」
芯珠にしては珍しく少し言葉に詰まっている。
「危険とは?」
「や、山の仲は地面が急ですし、周りも暗いので木とかにぶつかる気が...」
芯珠に限ってそんな失態は起こさないと思うが。
「...芯珠さん、もしかして怖いんですか?」
「...!?」
赤条寺に指摘され少しだけビクッとした芯珠。
「怖いというのは運転のことですか?」
「いえいえ、肝試しそのものに対してです」
「わ、私がオカルトにビビっていると!?」
...芯珠さん。
そんなに動揺するとバレバレだよ。
「い、いいでしょう。私もその肝試しに参加します」
「これで決まりですね」
そのような経緯をえて、今芯珠さんの車でその神社まで向かっている。
「七桜さん、実際にその神社には何か目撃証言みたいのはあるんですか?」
「一応口コミによると、夏の夜に行くと、背が高くて全身が黒い何者かが話しかけてくるとあります」
どうもこの手の口コミは信用できない。
「......」
今の栄那の話を聞いて芯珠が少し震えている。
「お、山が見えてきたな」
正面にはそこまで大きくない田舎特有の山が広がっていた。
「...どうせなら歩いていきましょうか」
栄那がそんなことを言う。
「え、栄那、先ほどは車で神社まで向かうと...」
「だって芯珠さんは山の中を車で移動することは危ないと思うんでしょ?」
「...っ」
栄那が芯珠を煽るように言う。
結局俺たちは車から降りて歩きで山の中の神社を目指すことにした。
しかし俺はまた気づいていなかった。
この先に世にも恐ろしい存在が待ち受けていることを。
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