寮生活6
私は朝起きるとそのまま四三川先輩の部屋まで行く。
まだ早朝ということで廊下ですれ違う人は少ない。
「...この部屋ですね」
四三川先輩の部屋の前までたどり着いた。
念のため起きているか確認するため、耳を澄ませる。
「...いびきは聞こえないですね」
別に昨日木野田さんに言われたことを気にしているわけじゃないですよ!
起きているのを確認し、ノックをする。
三回ノックすると中から
「入っていいわよ」
と声がした。
「失礼します」
まるで面接時のように丁寧にドアを開ける。
「あら?誰かと思えば朝が弱い神楽ちゃんじゃない」
「......」
危ない危ない。
四三川先輩の挑発に乗るところでした。
「こんな朝早くから何の用かしら?」
私の真剣な顔を見て茶化すのをやめてくれました。
「...先輩は私がなんでこの寮生になったのかご存じですか?」
「当然知っているわよ。理事長にこの寮の治安を改善してほしいと頼まれたんでしょ」
「ええ、そして昨日評価を著しく下げている成宮さんに会いました」
「ふ~ん、それで?神楽ちゃんから見て彼女はどんな印象かしら?」
「正直言って、典型的な不良女子という印象しかありません」
「それはそうでしょうね。事実そうだもの」
「ですが、彼女があそこまで闇落ちした責任はあなたにもあると思います」
「私に?」
その時初めて、四三川先輩の眉毛がピクリと動いた。
「聞くところによれば先輩はこの寮の規則をかなり厳しく定めているとか」
「別に厳しく定めているわけじゃないわよ。そもそもこの規則を厳しいと思う時点でそちらに問題があるわ」
「先輩が言いたいことは分かります。聖神女子高生なのだから厳しい規則にも従えということですね?」
「ええそうよ。これぐらいの規則も守れないようじゃ聖神女子に向いてないもの」
「だから成宮さんを懲罰房送りにしたと?」
「懲罰房って言い方はやめてくれるかしら?せめて反省室と言ってちょうだい」
どちらも大した違いはないと思うが。
「彼女を反省室に送ったのは当然のことよ。彼女は規則をこれっぽちも守らないんだから」
「ええ、それについては同感です。彼女は夜遊びや飲酒等を行っているんですから」
飲酒に関しては私の憶測だが、現にあの部屋のクローゼットの中に大量のビールの缶が見えたのだから。
「ただ、彼女がこのような非行に走ったのは先輩が規則を厳しくしたからでは?」
「だからそれはこの名門の聖神女子の生徒として」
「私はそうと思いません」
「は?」
「この聖神女子がそんな誇れる高校ではないと言っているのです」
「......」
これはかなりの爆弾発言ですが、偽りのない私の本心です。
「...神楽ちゃん。さすがに神楽ちゃんでも今の発言は見逃せないわ。あなたは自分が通っているの高校を誇りに思っていないと?」
「ええ、少なくても四三川先輩のような小物が支配できる高校なんか底辺というほかありません。まだ成陸学園の方がマシです」
成陸学園と言ったのはもちろん兄さんが通っているからです。
「...私が、小物ですって...?」
この顔はかなり効いてるみたいですね。
「ええ、あなたはとんでもない小物です。そうやって厳しい規則を定めて、周りの人間を支配して、自分に従うイエスマンしか周りに置かない飛んでもない臆病者です」
「.......」
「あなたは恐れていたんじゃないですか?いつか私みたいな反発する人が現れることを」
「......」
「だから気にいらない人は村八分にし、反発する可能性がある人を排除していたんじゃないですか」
「......」
「ただ、規則を厳しくさせ過ぎたのは失敗でしたね。厳しい規則のせいでどんどん寮生たちの不満が膨らんでいき、だんだん漏れ出すようになった」
「......」
「今は少しづつ漏れているだけですが、これが一気に破裂したらどうなっちゃうんでしょうか?」
「......フ」
「ですがそんな小物のあなたに最後のチャンスを上げます。今すぐに厳しい規則を撤廃し」
「フフフ」
「?」
突然四三川先輩が愉快そうに笑い始めた。
「フフフ...本当に私にここまで言える生徒はあなただけよ」
「...そうですか」
「確かにあなたが言うことも一理あるわ。だったらここは公平に決めない?」
「というと?」
「今日の夕食の時間、それぞれが皆さんに訴えて、それでどちらの意見に賛成かを多数決を取るの」
「......」
「どうする?やめるのなら今の内よ?」
「当然やります。だってあなたは小物ですから。この夜崎神楽が小物に負ける道理はありません」
「言うわねぇ」
こうしてあまりにも不利な演説対決をすることが決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます