寮生活4

「...ん」


今日も朝のチャイムで目を覚ます。


芯珠がいない生活をしてみて、私が本当は朝が弱いということに気が付いた。


平日の朝はいつも無理をして朝早くに芯珠に起こしてもらっている。

もちろん兄さんの顔を見るためです。


でも、こうしてチャイムで目を覚ますのは目覚めが何故か悪い。


普段どれだけ芯珠が私のことを丁重に起こしているのかがよくわかります。


とりあえずベットから起き上がると


「え?」


部屋の扉の方に同じルームメイトである、木野田さん、吉岡さん、松瀬さんが並んで立たされている。


「えーっと、皆さん何して」


「おはよう神楽ちゃん」


私が事情を聴こうとして三人に話しかけると、いきなり横の方から声がしました。


「わ!?」


「あら、神楽ちゃんてそんな可愛い反応もできるのね」


私の横に立っているのはどこをどう見ても四三川先輩。


「四三川先輩!?なんでこの部屋にいるんですか!」


「なんでって、昨日も言ったでしょ、部屋の点検をするためよ」


「え?だって昨日先輩がそれはもう終わったって」


私がそう言うと四三川先輩はあきれたようにため息をつく。


「あのね神楽ちゃん。こういう部屋の掃除チェックとかは普通抜き打ちでするものよ。私が昨日チェックするって言ったのももちろんフェイクよ」


「ふぇ、フェイク?」


「そう。まぁ屋敷育ちの神楽ちゃんは全部メイドに押し付けているのだからこういう常識を知らなくても無理もないわ」


今の言い方は少しイラっときました。


「わ、私も全部メイドに押し付けてるわけじゃありません」


「あらそう?じゃあ今そのしわだらけのあなたのベットのシーツを綺麗にできる?」


「そ、それは無理です」


ベットの掃除なんか普通はしないでしょう。


「まぁとりあえずあなたが起きるまで待っていたけど、この部屋は他の部屋と比べて比較的綺麗ね。合格よ」


「あ、ありがとうございます...」


吉岡さんが消えそうな声でお礼を言う。


木野田さんも頭だけは下げた。


松瀬さんは頭も下げない。


当然私も下げません!

下げてたまるもんですか!


「それじゃあ早く食堂に行きなさい。全員あなたたち待ちなんだから」


四三川先輩が去っていく。


「おい夜崎。お前もうちょっと寝相よく眠れねぇか?」


「わ、私の寝相は悪くありません!」


「お前から見たらそうかもしれねぇが、あれはちと下品だぞ」


「げ、下品!?」


そんな言葉生まれてはじめて言われました!


「ずっと四三川先輩がお前の隣に立っていたのにお前は一向に起きなくてずっとクソでけぇいびきかいてたぞ」


「!?」


そんなのは初耳です!

芯珠はいつも何も言ってきません!


「あとお前どういう寝方したら一晩で昨日綺麗にしたしたスーツがこんなしわくちゃになるんだよ」


確かに私のベットのシーツは脳みそのしわみたいになっていました。


「まぁ何はともあれ四三川先輩にOKもらえたから別にいいけどよ」


「...//」


何たる屈辱!!

私はしょせん不器用な小娘に過ぎないということですか!


「二人とも、今は時間ないんだからさっさと食堂に行くよ」


食堂に着くともう全員がすでに座っており。またもや気まずい雰囲気になった。


クソまずい朝食を食べ終え、自分の部屋に戻ると、今度こそ兄さんに電話しようと思い、スマホで兄さんの番号にかける。


数回の呼び出し音が鳴ると、兄さんの声が聞こえてきた。


「もしもし」


「もしもし、兄さんですか?」


久しぶりの兄さんの声//


しばらく聞かないうちにまた少し低くなりましたか?


まずは自分が電話したわけを素直に伝えよう。


「昨日も電話かけたんですけど出てくれなかったので...久しぶりに兄さんの声が聞きたいなって」


兄さんは何も答えない。


なんか電話の向こうが妙に騒がしい気がします。


兄さんは私が組んだ勉強スケジュールに取り組んでいるはずなのに。


「それで兄さん。ちゃんと勉強はしてますか」


念のために訊いてみる。


でもまさか兄さんが二回も私との約束を反故にするなんて


「はい、七桜さんざんねーん!」


「...私の道ずれ作戦が失敗しましたわ」


ない、とは言えないようです。


「兄さん、今のって」


明らかにさっきのはあの女狐と下品女の声です。


でも信じたくありません。


だから兄さんに直接問いただそうとすると


「澪未矢様、コントローラを握られていないようですがここは決めさせてもらいます」



...芯珠の声です。


これはもう黒ですね。


「...ふーん。兄さん、夏祭りの次はゲームですか。相変わらず夏休みENJOYしてますね」


そう言うと電話を切る。


「ちょ、ちょっとアンタ...」


「なんですか松瀬さん?」


松瀬さんがおびえるように指を指す。


「スマホに...ヒビ入ってるわよ」


どうやら強く握りしめすぎたようです。

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