迎え

「成陸学園の生徒さんなのねぇ」


あれから誤解は何とか解けたが今俺たちはこの四三川の部屋でいろいろと尋問を受けている。


部屋には俺たち以外に寮生が全員集合していた。


「...で、あなたは神楽ちゃんのお兄さんなのね」


「はい、その通りです」


「全く、兄を寮に連れ込むとは神楽ちゃんもとんだブラコンね」


そう言われた神楽は恥ずかしそうに俯く。


「それで、あなたは生徒会長なの?」


「ええ、その通りです」


赤条寺は何にも動じていない。

その度胸はさすが生徒会長だ。


「本当ならこのことは成陸学園の方に報告するべきでしょうけど、生徒会長に免じてそれはご勘弁してあげるわ」


助かった。


もしこのことが成陸学園に報告なんてされたら栄那にバレてしまう。


もしそうなったら今度こそ監禁ENDもしくは心中ENDだ。


「それよりもあなたたち今から帰れます?」


「今から?」


どうだろ。

もう11時を過ぎている。

今から芯珠さんに連絡したら来てくれるだろうか。


「大丈夫です。澪未矢先輩にはメイドさんがいるんで」


なんでお前が言うんだよ。


「ああ、確か神楽ちゃんの家は豪邸だったわね。なら今からでも帰れるわね」


なかなかこの人の鬼畜だな。


「それはいですね。私も芯珠にはいろいろと訊きたいことがありますから」


だからその逆の意味で神々しい笑みやめろって。


俺が連絡すると20分ぐらいで神楽が迎えに来た。


「...澪未矢様。あれほど神楽様にはお会いしないようにと申し上げたはずですが」


「ごめんって。まさか神楽も夏祭りに来てるとは思わなかったんだよ」


「芯珠?私確か貴女に兄さんの勉強の監視役を命じたはずですが」


後ろからずいぶんと楽しそうな神楽の声が聞こえる。


「申し訳ありません、この罰はすべて私が背負」


「あーもうそういうのいいですから早くメイドさん運転してくださいよ」


芯珠の言葉を遮り赤条寺が運転を促す。


「...では神楽様、失礼します」


お辞儀をして車を走らす芯珠。


後ろからずっと神楽の嫉妬に溢れた視線を感じるが気づかないふりをした。


「......」


「......」


「......」


気まずい沈黙が続く。


沈黙を破ったのは赤条寺だった。


「とりあえず夏休み中は私も先輩の屋敷に泊まりますね」


「「...は?」」


芯珠と声が重なる。


「そもそも私夏休み中はずっと先輩の屋敷で過ごすつもりで先輩を夏祭りに誘ったんですけど。親にも長い間キャンプ行ってくるって言って来たんですよ」


「ええっと」


俺は別に大丈夫だが、芯珠が許可してくれるかどうか。


「赤条寺様、一つ訊いておきますが」


「何?」


「もし私が屋敷に泊まることを許可しなかった場合はどうなさるおつもりで?」


「もちろん先輩と適当にそこら辺のラブ」


「分かりました。許可します」


まぁそうなるわな。


「それにしても芯珠さん、さっきは助かりましたね」


「何のことでしょうか?」


「さっき私が、言葉を遮らなかったら神楽さんに恐ろしいお仕置きされていましたからね」


確かにあそこで赤条寺が言葉を遮らず芯珠が罪を全部受けると言い切ったらと思うとぞっとする。


「私は本当に罪を全部受けるつもりだったので問題ありません」


「そういう模範的な考えを求めてるわけじゃないんです。ちょっとは私に感謝してはどうですかということです」


「......」


あまり芯珠に借りを作るのはうまくいかないきがするが。


「分かりました。ここは借り一つということにしましょう」


「え?」


芯珠にしては意外だな。


「ですが赤条寺様を屋敷に泊めることで借りはなくなります」


「......」


そうきたか。


「まぁいいです。さすがはメイドものの同人誌を何冊も読んでいる先輩が認めるだけありますね」


それは誉め言葉なのか?


そうこうしているうちに屋敷が見えてきた。

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