寮に連行

「......」


「...それで兄さん、どうして兄さんが夏祭りにいたのかを話してくれますか」


相変わらず神々しい笑みを放つ神楽。


ただ今の俺にとっては囚人を拷問でいたぶって愉悦を感じて微笑んでいる拷問官にしか見えない。


今なぜ俺がこの聖神女子の寮の部屋に幽閉されているかというとあの夏祭りにばったりと神楽に出くわしてしまったからだ。


「確か私兄さんに勉強のスケジュールを作った気がしたんですけど」


「......」


「その兄さんがなんで後輩の女の子と夏祭りに来てたんですか?」


「......」


言い訳が思いつかない。


ちなみに俺と一緒にいた赤条寺はほかの部屋で幽閉されている。


「それにしても芯珠は何をしているのでしょうか?今回の件は芯珠にも非があるんですか?」


「そ、それは違う」


流石に芯珠のことは庇わなきゃいけないと思い声を上げる。


「俺が泣きながら土下座で頼んで最終的に芯珠が折れてくれたんだ」


「兄さんが泣きながら土下座...?」


神楽が動揺している。

これはいけるかもしれない。


「へぇ~、泣きながら土下座するぐらいあの後輩の女の子と一緒に夏祭りに出かけたかったんですか」


あ、今度はそう来たか。


「ちょっと夜崎。あんまブラコン発揮させんなよ」


「ぶ、ブラコンなんかじゃありません!」


「いいじゃねぇか兄貴が別に夏祭りに来てたって。もしかしたらお前に会いたかったからかもしれねぇだろ?」


「え?そうなんですか兄さん?」


ナイス名も知らない女の子!


「そ、そうなんだよ。赤条寺はあくまで芯珠を納得させるために連れてきただけに過ぎなくて、ほんとは神楽に会いに来たんだよ


このルートにおけるメインヒロインに対してひどい対応だが仕方ない。


「兄さん...//」


よし、いい感じにデレてるな。


「先輩、嘘はいけませんねぇ」


「!?」


いつの間にか赤条寺が部屋に入ってきてた。


「な、なんでお前がここにいるんだ。違う部屋に監禁されてなかったか?」


「あいにくヤンデレの監禁もののSSを数えきれないほど読んでいる身なんですぐ抜け出せました」


流石に監禁まではされてなかったと思うが。


「ちょっとなんなんですか貴女は!兄さんは嘘なんてついていません」


「それは違いますよ神楽さん。先輩は今日私と出かけるためにメイドさんにメイドものの同人誌を渡すことで交渉してました」


「え?」


何捏造してるんだよ!?

それと神楽が割と真に受けてそうな顔をしてるのが怖い。


「に、兄さんがそんない、いやらしいものを持ってるはずがありません!」


「でも確かメイドものや後輩ものはありましたが妹ものはなかったような」


「...本当ですか兄さん?」


だからなんですぐ真に受ける。


だが現に俺はあまり妹ものは読まない。

どちらかというと姉ものを好む。


「そもそも貴女はどこの誰なんですか?ただの兄さんの後輩なんですよね?」


「”ただの”とは失礼ですね。私は先輩をあの胸が意外と小さいマドンナからNTRにきた生徒会長です」


「NTRに来た?」


あまり神楽にそういうことを吹き込むな。


「ええ、まぁいわゆる逆NTRという奴です」


逆NTRっていう単語初めてこの世界で聞いたな。


「...何を言っているのかよくわかりませんがとりあえず貴女がいろんな意味で危険な女ということは分かりました。もう兄さんに会わないでください」


「おい、だからお兄ちゃん大好き独占ブラコンやめろって」


「木野田さんは黙っててください!」


これは本気で怒ってるな。

まぁ何となく神楽と赤条寺が相性悪いのは勘づいてはいたが。


「もういかにも先輩が好みそうなヤンデレブラコン女ですね」


「誰がヤンデレブラコン女ですか!」


どっちも合ってるとけどな。


「うるさいわねぇ。さっきから何を騒いでいるの?」


すると突然部屋にまた知らない女子が入ってきた。


四三川よみかわ先輩、お疲れ様です」


木野田と呼ばれた女子が頭を下げる。

何となく立場が上だということは分かった。


「あら?あなた今日から入寮する神楽ちゃんじゃない」


「はい、今日からお邪魔になります四三川先輩」


「ええ、よろしくね神楽ちゃん。それとええっと、あなたはどこの誰かしら?この学校の生徒じゃないだろうけど」


四三川と呼ばれた女子の問いに赤条寺は何かを考えてる。


「まぁいいわ。それでなんで女子高の寮に男の子が混じってるのかしら?」


俺のことをじーっと見つめる四三川。


「えーっと」


俺が何かを言う前に赤条寺が答えた。


「この人は私の恋人です。私たちがこの近くのラブホに入ろうとしたところをそこの神楽さんに捕まってここまで連れてこられたんです」


おい。


「へぇーラブホねぇ」


四三川は俺の方を軽蔑するような目で見てきて、木野田は笑いをこらえていて、神楽は顔を赤くして震えている。


...とりあえず早く帰りたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る