生徒会長とゲーセン

「それでどこに行くんだ?」


前の秋葉美沙祢の家に向かった時と同じようにタクシーに乗って駅まで向かう。


「ちょっとここから6駅先にある町で大規模の夏祭りがあるんですよ」


夏祭り?ずいぶん早いな。


「それでいつもギャルゲでヒロインと一緒に夏祭りに行って好感度を上げている先輩のために私と一緒に夏祭りに連れて行ってあげるというわけです」


まぁギャルゲあるあるだな。

もちろんエロゲあるあるでもあるが。


「でもそれは夜だろう。まだ朝だぞ。それまで何するんだ」


「そうですね。それまではとりあえずどこかで遊びましょうか」


俺も人のこと言えないが多分赤条寺は友達と一緒に遊んだ経験とか少ないんだな。


「...じゃあゲーセンとか行くか」


「いいですね。私もちょうどほしいフィギアがあったんです」


なんかだんだん赤条寺がオタクに見えてきた。


「そういえば生徒会の仕事はいいのか。夏休みも仕事が山ほどあるとか言ってなかったか?」


「本当はその仕事を先輩に手伝ってもらう予定だったんですけど...秋葉美沙祢って覚えてます?」


忘れるはずがない。


「あの娘が少しでも恩返ししたいと言って来たのでとりあえず仕事を丸投げしてきました」


「鬼畜か!?」


一人で生徒会業務はきつすぎないか?

それに夏休み明けにすぐに文化祭があるらしいから夏休みなんて俺と同じように実質存在しないだろ。


「私があの子を攻略するために何冊もの学園もののラノベを読んだことと比べても生徒会業務を一人でこなすのはあまり大変じゃありません」


絶対そっちの方が大変だろ。

よっぽどそのラノベがつまんなかったら別だが。


「ほら先輩、降りますよ」


タクシーを降りてホームに向かう。

もちろんタクシー代は俺のおごりだ。


「てかその祭りが行われる街の最寄り駅はなんて言う名前なんだ?」


「先輩知らないんですか?まぁ先輩ぐらい偏差値が低い人なら当然か」


お前も俺と同じ学校に通ってるんだから偏差値は大差ないと思うが。


「あの誰もが知る名門、聖神女子高校の最寄り駅である聖神女子前駅です」


「......」


なんかとんでもないいやな予感がする。

こんなベタな展開ある?


「どうしたんですか先輩?もう電車来ますよ?」


「い、いや何でもない」


目に前ではもう電車が到着していた。


いや、確か芯珠が神楽はあくまでも量の治安改善のために寮に向かったはずだ。

まさか寮生と夏祭りに出かけるなんてしないはずだ。


そうに決まってる。


「先輩さっきから黙ってどうするんですか?やっぱり押しのvtuberが恋しくなったんですか」


「だからvtuberは基本見てないよ」


そうだ。考えすぎだ。

いくらエロゲの世界だからといってそんなベタな展開が起きるわけない。


そう考えていると2駅目に到着した。


「着きましたね。先輩、降りますよ」


「え?」


まだ聖神女子前ではない。


「先輩がゲーセンに行くって言ったんじゃないですか」


まぁそうだが。


「先輩知らなんですか?どんだけ今までエロゲとギャルゲとvtuberだけで生きてきたんですか?」


vtuber以外は当たってるから何も言えない。


「この淀井よどい駅はオタクが集まる、我々...先輩にとっては天国な街ですよ」


今自分がオタクであること認めたな。


駅から出ると確かに周りにはアニメグッズとかが売ってありそうな店がたくさん並んでる。


「ほら、あそこが一番大きいゲーセンです」


赤条寺が指を指す方向には、もはやパチンコ店みたいな大きさのゲーセンがあった。


「えーっと、あ、ありました、この台です」


パチンコの台みたいな言い方するな。

普通にUFOキャッチャーの台だ。


「あのフィギュアを取ってほしいんですよ」


どうやら赤条寺が言っているのは最近流行っている4人の妹たちが大好きなお兄ちゃんに彼女ができたことで嫉妬に狂いヤンデレ化していくという、今まさに俺が置かれている状況に似たアニメのキャラらしい。


100円をいれてクレーンを動かす。


「あ、先輩何してるんですか!」


どうやら奥まで行き過ぎたようだ。


それから5回挑戦したがうまくいかない。


「はぁー。先輩がここまで不器用だとは思いませんでした。だからいつも誰でもできるノベルゲームばっかりやっているんですね。たまには死にゲーとかプレイしてみたらどうです?」


死にゲーほどクソゲーはない。


「こうなったら私が手本を見せてあげます」


「お前得意なのか?」


「もちろんです。私は先輩と違って今まで死にゲーをプレイしてきました」


クリアしたとは言ってないな。


「さぁ先輩、早く100円玉を入れてください」


結局俺が払うんかい。


「まずはフィギュア前までクレーンを動かし」


ちょうどいいところでクレーンが止まる。


「そしたら奥まで動かします」


そう言うとクレーンを奥に動かし、フィギュアの真上まで移動させた。


クレーンがそのままフィギュアのボックスを掴む。


「来た!」


嬉しそうに声を上げる赤条寺だがクレーンゲームをやったことがある人ならわかるが掴んだとしても持ち上げるとすぐに落ちてしまう。

ほら、こんな風に。


「...あ」


まるで煽るかのように綺麗に落下したフィギア。


「...先輩、もう一度です」


今日このクレーンゲームだけで俺が何枚の100円を犠牲にしたかは容易に想像できるだろう。

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