生徒会長の誘い

「...ん」


今日もスマホの不快すぎるアラーム音で目が覚めた。


「今日でもう夏休み4日間か」


この4日間はずっと勉強漬けだった。


流石に1日目みたいなスケジュールが続いたらぶっ倒れるため所々芯珠に休ませてもらった。

別にいやらしい意味じゃない。


「多分今日ももう朝食できてるだろ」


この4日間で成長したのはなんといっても早起きだ。


学校のある日は芯珠の声で目を覚ましてたのが今じゃ不快なアラーム音だけで起きることができる。


「...澪未矢様、今日もお早いお目覚めですね」


なんか俺が一人で起きるようになってから芯珠の朝の機嫌が少し悪いように感じる。

多分俺がもう芯珠の声で起きるのを必要としていないから不貞腐れているのだろう。


「澪未矢様、今日の朝食です」


そう言っていつものように俺の真横に座ってきて一緒に食べる芯珠。


「なぁ芯珠さん。神楽は夏休み中ずっと寮で生活するのか」


「神楽様は寮の治安をよくするために学園長に頼まれて寮にお越しになられているのですからもう寮の治安は大丈夫だと神楽様が判断するまではお戻りになられないかと」


あの聖神女子の治安が悪い?

やっぱ女子高ってよくドラマで見るようにいじめとかが起きやすいのか?


そんな雑談をしながら二人で食事していると家のアラームが鳴った。


「こんな時間にどなたでしょう」


この時間に押しかけてくるには栄那ぐらいなのだが栄那はいつもアラームを押さずに問答無用で不法侵入してくるため多分違う。


「あ、すみません。そちらに夜崎澪未矢先輩はいますか?」


「!?」


この声は間違いなく赤条寺だな。


「どちら様でしょうか」


「澪未矢先輩と同じ学校に通ってる赤条寺紅愛という者です。とりあえず中に入らせてくれませんか?」


「ちょっと待っていてください。今澪未矢様に確認させていただきます」


まずい。

なんとなく赤条寺と芯珠は相性が悪い気がする。


「なんですか?澪未矢”様”なんて先輩のこと呼んでるんですか?」


「...そうですが何か?」


始まった。


「いつもネットの熟女のエロ体験談なんて読んで興奮している先輩に”様”なんてつける必要ないと思いますけど?」


だめだ赤条寺!

芯珠にはそういうの通じないんだ!


「...あまりそういう品のない発言は慎んでいただけますか」


「そういえば前にメイドものの同人誌とか学校に持ってきてて読んでいましたよ」


「!?」


変な嘘つくな。

それとなんで芯珠まで動揺してんだよ。


「れ、澪未矢様は決してそのようなど、どう...いかがわしい書物なんてお読みになりません!」


もう明らかに動揺してるのがバレバレだぞ。


それにメイドものの同人誌なんて男子大学生ぐらいなら全員読んだことあるだろう。

...白状すると熟女の体験談とかも中学生ぐらいまでは読んでいた。


「え、え~と芯珠?俺になんか用があるみたいだからとりあえず俺が出て行くよ」


「は、はい。かしこまりました」


門まで行くと赤条寺が立っているのが見えた。


「先輩おはようございます」


相変わらず性格がきつそうな顔をしているな。


「おい、赤条寺。お前の口調は芯珠には通じないからやめろ」


「あのメイドさん芯珠っていうんだすか?あとで連絡先教えてくださいよ」


「お前は絶対ダルがらみするから駄目だ」


俺も学校に迎えに来るように連絡する以外は特に何も連絡し合わないが。


「それでいったい何の用だよ」


「先輩レベルの陰キャは夏休み中ずっとラノベを読むかvtuberに貢ぐぐらいしかすることないでしょ?だから私が遊びに誘ってきてあげたんですよ」


ラノベを読むのはあっているがvtuberに貢いだことは一回もない。


「遊びか...」


これはちょっとまずくないか?


今一応俺は夏休み中はずっと勉強しなくてはならないという足かせを神楽にはめられている。

それを外して遊びに行くなんてもし神楽に知られたら今度こそbadendになってしまう。


だがおそらくだが今は完全に赤条寺ルートに分岐している。


ここで赤条寺の誘いを断ったりしたら赤条寺の好感度が下がりそれこそbadendになりかねない。


ここは赤条寺の誘いに乗るべきだろう。


「分かった。でも一応芯珠さんに一言言わなきゃいけないから待っててくれ」


「はい、待ってます」


果たして芯珠は了承してくれるのだろうか。


俺がおねだりすれば行ける気もしなくもないが。


「...それで赤条寺とちょっと出かけることになったからその...」


完全に冷たい目で見られている。


「...はぁー。わかりました。私は澪未矢様に仕えている身。澪未矢様がそこまでおっしゃるのなら黙認しましょう」


「ありがとう、芯珠さん」


「ただ、なるべく早く帰ってきてください。別にどこかに泊まったりしてもいいですがくれぐれも神楽様が帰ってくるまでにお帰りになられてください。

私もある程度はフォローしますが、それにも限度があります」


「うん、わかった。なるべく早く帰ってくるよ」


と、門に向かおうとすると


「それで、その」


「ん?」


芯珠が何かを言いたそうにしている。


「め、メイドもののど、同人誌をお読みに...」


「じゃ行ってきます!」


逃げるように門へと向かった。

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