テスト本番

「澪未矢様、朝です。お目覚めになられてください」


芯珠の声で目を覚ます。


今日から成陸学園の期末試験が始まる。


今日の科目はそれなりに勉強しておいたためあまり鬱な気分にならずに済んだ。


一階ではいつものように神楽が居間で紅茶を優雅に飲んでいた。


「あ、兄さん。今日はいつもに増して天気がいいですね」


確かに神楽の笑みがいつもより神々しさが増して見える。

もしかしたら神楽レベルになるとテストが嬉しいぐらいの気持ちになるのだろうか?


「そういえば兄さんも今日からテストですよね」


「ああ」


あまり朝からテストの話はしないでほしい。


「あんなに私がみっちり教えたん出すからこれでもし平均以下とかだったらさすがに私も堪忍できませんよ」


神々しい笑みのままそんなこと言わないでほしい。


「澪未矢様、神楽様、朝食の準備ができました」


それからはいつも通り朝食を食べて何故か栄那が早く来て神楽や芯珠に喧嘩を売るという定番の流れだった。


「そういえば澪未矢さん、今日からテストですわね」


車の中でテストのことを話さないでほしい。


「まぁわたくしたちからしてみると庶民のくだらない遊戯にしか見えませんですけどね」


確か栄那もめっちゃ頭いい設定だったな。


「まぁこんなことはないだろうと信じていますが、もしわたくしの許嫁である身で平均以下だったら...少し澪未矢さんには”わからせ”が必要ですわね」


赤条寺みたいなことを言ってしてしまうが、わからせっていう言い方がもうエロゲっぽい


学校につき、いつも通り栄那と手をつなぎながら登校する。

テスト当日ぐらい周りからの視線が弱まってほしいのだが、もちろんそんなことはない。


「おい澪未矢、お前勉強した?」


「まぁ一応は」


「マジかよ。俺はずっとダチとゲーセンにいたからなんも勉強してねぇわ」


お前の場合はダチ(先生)とゲーセン(塾)だろ。


「ちょっとお前カンニングさせてくれね?」


逆に俺がお前の答案をカンニングさせてくれ。


「はーい。皆さん席について」


いつも通ホームルームが始まる。


「はい、それでは一時間目は日本史なのでそれまで皆さん最後の見直しをしておくように」


毎回思うのだがこの直前の見直しって果たして意味あるのか。


チラッと長谷川の方を向くと、もう誰とも喋らず無言で教科書とレジュメを凝視してた。


「はい、それでは日本史のテストを始めます。机の上を筆記用具だけにしてください」


...結果から言うと手ごたえはあった。

だがテストあるあるなのだが明らかに解けると思ったところを最後まで思い出せなかった場面がいくつもあった。


「...これ平均点いける?」


普段の授業内容からしてあまり頭がよくないように見えるが、テスト範囲の広さからして意外と成陸学園頭いい説が浮上している。


「次は英語だな」


英語は今回のテストの中で一番重要だ。

なぜなら神楽にあんなに教えてもらったのに平均以下なんて取ったら夏休み中ずっと監禁され勉強を強いられるとかいうルートに分岐してしまうかもしれない。


そういえばいつもなら長谷川が解けなかった自慢をしてくるところでが一向にしてくる様子がないな。


チラッと長谷川の方を向くと何やら頭を抱えながら座っていた。


...多分うまくいかなかったんだな。


「はい、では英語のテストを始めます」


どこかで聞いたことある声だなと思っていたら案の定釖竜さんだった。


まさか一番大切な英語の時間の監督役が釖竜さんか。

失礼かもしれないがなんとなくモチベーションが下がったのを感じる。


「おやおや、どうしました澪未矢君?何やら険しい顔をしていますが」


そうやってみんなの前で俺に絡むのはやめてほしい。

それとしたの名前で呼ぶとまた変な噂が流れそう。


テスト時間が終了する。


「はい、そこまで。では後ろから前に答案用紙を送ってください」


...これも手ごたえはあった。


だがやっぱり神楽に叩き込まれた単語や文法に関する問題ではなく、長文の内容に関する問題が多かった。

...絶対に和訳を暗記した方が高得点獲れたな。


「今日のテストはここまでです。今日は早く帰って勉強時間をたくさん確保することをお勧めします」


今回は四科目なので一日二科目なのが4日間続く。


「澪未矢、どうだった」


日本史が終わった時には元気がなかった長谷川がニヤニヤしながら俺に近づいてきた。


「いやぁー英語ムズすぎだったな。誰があんな問題分かるんだよって話だよな」


「ああ、日本史は」


「マジでムズイな英語!これは赤点だわ!」


「確かにな。それで日本史は」


「もう早速追試の日時確認しなくちゃ。ダチにその日は遊べないって伝えねえと」


「......」


多分日本史は本当にできなくて英語が予想以上にできたって感じだな。


「じゃ俺は明日テストだけどダチとゲーセン行かなきゃいけねぇからな。それじゃあな」


そう言って走って帰っていった。


俺もこれから勉強する必要があるため車で芯珠さんに迎えに来てもらう。


こんな生活が4日間続いた。


だるいことにこの学校の先生たちは仕事が早いらしく、もうもう4日間が終わった段階でほとんどの先生が採点を終えているらしい。


今日はテストが終わった翌日だがもうほとんどのテストが返される。


「澪未矢様。朝です、お目覚めになられてください」


今日はテスト当日よりも目覚めが悪かった。

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