生徒会長の運動神経
今日の体育は体力測定なので出席する。
よくアニメで体力測定がだるいからサボるというキャラがいるが俺にとっては体力測定は救いなのだ。
最近の体育は球技ばかりだったので個人競技はサボる理由がない。
体力測定はペアを2人ペアを作らなければならないのだがそこは長谷川で何とかなる。
完全な偏見だが長谷川は運動音痴な気がする。
「はい、じゃあ次はボール投げやるぞ」
本当にこのボール投げをする意味が昔からわからない。
「うわーボール投げか。俺あんま得意じゃないんだよね。澪未矢は?」
いやお前は全部苦手だろうが。
「俺も今までで20メートル越したことないな」
「マジで!実は俺も」
お前の場合は10メートルもいかなそうだけどな。
「はい、じゃあ次長谷川」
「おっと、もう俺の出番か。澪未矢頼むぜ」
最後の方は早口で小声だったためよく聞き取れなかったが、ああいうときは大体ちょっとサービスしてくれという意味だろう。
まぁ俺も長谷川には反復横跳びや長座体前屈でだいぶサービスしてもらったので断れないが。
「はい、長谷川8メートル」
まさか本当に10メートルもいかないとは。
ここは2倍して16メートルと書いておくか。
そのあとも次々クラスメイト達がボール投げをするが大体平均で20メートル前半ぐらいだ。
「次、夜崎」
俺の名前が呼ばれる。
夜崎澪未矢がどれぐらいの運動神経かはわからないが、おそらくあまりいいとは言えなそうである。
「じゃ長谷川、頼むぞ」
「任せておけって、お前が大恥をかかないようにばれない程度に盛ってやるからよ」
ボールを持ち投げる姿勢を整える。
「!?」
何だこれは!?
腕が軽いぞ!
もしかして夜崎澪未矢はハンドボールか何かをやっていたのか?
これならいける!
「夜崎12メートル」
「......」
やっぱり転生者の運動神経に引っ張られるらしい。
「お疲れ、とりあえず16メートルぐらいにしておいたぜ」
それじゃお前と同じじゃねぇか。
俺は2倍も盛ったんだしもう少しサービスしてくれてもよくない!?
こいつが融通が利かなそうなのは何となく予想できていたが。
とりあえず今日行う予定だった体力測定は終わり残りの時間を長谷川とぼーっと過ごしていると
「おい、すげーぞあれ!」
突然そんな声が聞こえてきたので声の方を見る。
何やら男子たちが向こう側の女子の方を向いて指を指していた。
その女子たちはシャトルランをやっているらしく体操着の色からして一年生だということが分かる。
どうやらもう100回は超えていてほとんどの生徒が脱落している中一人だけ汗一つ買えてなくまだ平均的な速さを保っている生徒がいた。
「あれって生徒会長だろ?」
「そうそう、確か赤条原だっけ?」
赤条寺な。
「澪未矢、あの子凄いな。さすが生徒会長様って感じだな」
まぁ俺から見てもあの子が赤条寺だということはすぐわかったが、なんか様子がおかしい。
というのも俺たちは頑張っている赤条寺を見て何やら騒いでいたが、赤条寺と同じクラスの生徒たちはあまり赤条寺を応援しようとしてない。
何なら少し赤条寺の方を見て恐怖しているというか。
まるで独裁者を見つめているみたいな構造になっていた。
「もしかしてあいついじめられてるのか?」
最初はそう思い心配になったがほかの生徒たちの顔を見てそれは違うということを理解した。
それから結局赤条寺はチャイムが鳴るまでずっと走り続けた。
他の生徒たちがグラウンドから姿を消し始めたころを見計らって、赤条寺の方まで駆け寄った。
「なんだ先輩ですか。てっきり私の走る姿があまりにもかっこよくて変な妄想をしていたため間違えて近寄ってきてしまったどこぞの
ついさっきまであんなに走ったのにすぐこの毒舌な開始をできるのはほんとに天才だと思う。
「赤条寺、さっきのお前凄ったな。あれはもしかして学校全体でトップを狙えるんじゃないか?」
「何を言っているんですか先輩?そんなの当然でしょ?仮に私を抜かす人が現れたらその人を誘惑してホテルまで連れてってそこで写真を撮って脅してその人にトップを譲ってもらいます」
赤条寺が男をうまく誘惑できるとは思えないが。
「それよりもお前、クラスでなんかあったのか?誰もお前のことを応援してなかったぞ」
「あーあ、そんなの当たり前です。ほら、もう少しでテスト習慣でしょ?」
「あ、ああ」
赤条寺に言われて今思い出した。
だがそれとこれとなんの意味があるんだ。
「私自分の成績もそうなんですけど自分のクラスの平均点が常に学年トップじゃないとイライラしてしまうんです。そのためテスト習慣は私はクラスメイトを無理y...自主的に居残って勉強するように促すんです」
無理やり残って勉強させるとかどこの自称進学校だよ。
「でも体育は筆記試験がないので私が実技でクラスメイトを引っ張っていくしかないんですよ。私のクラスはひょろがりばかりなんでね」
なるほど、だから生徒たちはあんな恐怖と尊敬が混じったような気がしていたのか。
「それじゃ先輩失礼します。この後は私が無理やり作らせた自習のお時間なので」
そう言うと赤条寺は早足で教室まで戻っていった。
とりあえずあいつと同年代で同じクラスじゃなくてよかったと思う。
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