非常勤教師と探索

「今日も生徒会活動か」


この前の土曜日に大きな問題を解決したんだから今日ぐらいは休みにしてくれないかなーと無駄な願望を捨てきれない。


「おう澪未矢、お前は今日も生徒会か?」


「ああ、そういうお前はもう帰るのか」


「今日はちょっと塾...じゃなくて久しぶりに地元のだちとゲーセンでも行ってくるわ」


もういいってそういうアピール。

見てるこっちが恥ずかしそうになってきた。


あと地元とかいうな。

偏見で申し訳ないがお前絶対都会育ちだろ。


「そういうことでもう俺は帰るわ。それじゃまた明日な」


走って去っていく長谷川の背中を見つめながら俺の塾時代のことを思い出す。


意外と思われるかもしれないが俺は高校2年生までは塾に通っていた。

だが担当の先生がどうにも俺のことを見下している気がして2年生の春休みに辞めた。


一番大事な時期に辞めてしまったがその時にはもう進学できればどこでもいいやという気持ちになっていた。

...結果飛んでもない無名大学に行くことになってしまったが。


「...今は思い出に浸ってる場合じゃないな。遅れたらまた赤条寺になんて言われるか分からない」


急ぎ足で生徒改質まで足を運ぶ。


外では運動部のでかい声が響いていた。


「あれ?赤条寺はまだ来てないのか?」


生徒会室に到着すると赤条寺の姿がなかった。


「あいつ俺が遅刻したら罵倒する癖に自分は平気で遅刻しやがって」


今度は俺が赤条寺の遅刻を煽ってやろうかなと思っていると、ドアノブに何か紙のようなものが引っかかってるのに気づく。


「なんだこれ?」


手紙の内容は


『私は先輩と違って多忙の身なので今日は休みにします。どうぞ先輩はまた家でハーレム系のアニメでも見てネッ友のオタクどもとアニメについてデュフり合っていてください」


文字でも容赦ない毒舌だな。

これを一般の生徒が見たらちょっとした騒ぎになりそうだぞ。


「とりあえず今日はやることがないのか。でも今から帰ったところで何もやることがないしな」


パソコンがないため何もできない。

かといってスマホでそういう動画や音声を聴くのもいつか芯珠あたりにバレそうだしな。


「...学校の中でも探索するか」


学食の場所が分からないほど俺はまだこの学校の構造のことを何も知らない。


「まずは一階から探索しようかな」


「おや?これはこれは澪未矢君じゃありませんか」


突然横から声を掛けられた。

横を振り向くと釖竜さんがいた。


「どうやら今日は生徒会は休みのようですね?澪未矢君は今からお帰りですか?」


「そうなんですけど、ちょっと学校の中を探索に」


「なるほど、放課後に学校を探検するのも青春の一つですからねー」


やばい。

ここからの展開が何となく読めてきた。


「それでは私もご一緒することにしましょう」


ですよねー。


こうして俺と釖竜さんは学校の中を一通り探索することになった。


探索してみて分かったことはこの学校が思った以上に地味ということだけだ。


これといって私立ならではの珍しい教室や最先端のコンピューター室なんてない。


本当にトイレが綺麗なことぐらいが取り柄の高校だ。

後で口コミでも見ておこう。


「こうしてみるとあまり私立という感じがしませんねー」


釖竜さんが俺の気持ちを代弁する。


そういえばこの人はなんでまだ学校に残ってるんだろう。

非常勤講師はすぐ帰宅するという話を聞くが。


「釖竜さんはどっかの部活の顧問ですか?」


「いえ、どこの顧問でもありませんよ」


意外だ。

見た目的に運動神経はかなりいい気がするが。


「確かに私はよく周りからスポーツの才能があるやらスポーツについては全能だとか持ち上げられることがありますが私自身スポーツなんて全く興味ありません」


まぁ何となく釖竜さんが一つのことに対して熱心になる性格じゃないのは知っているが。


「ただ、最近は澪未矢君について興味がありますね」


「え!?//」


なんか言い方がエロイな。

「そういえばそんな興味をそそられる澪未矢君が今日また七桜さんと体を密着させながら登校して学食でイチャついていたと聞きましたが」


なんで知ってる?


「ま、まぁちょっと今日は栄那...じゃなくて七桜のテンションが高かっていうか...」


「あの娘はいつもテンションが高いですね」


栄那のテンションが高いという言い訳はいつまでも使えるというわけではなさそうだ。


「一つお聞きしますが澪未矢君と七桜さんはどういうご関係で?」


「な、七桜とは幼馴染ですね」


「なるほど幼馴染ですか。なるほどなるほど」


笑顔で納得したようなしぐさをする釖竜さん。

だが何となくだがそのしぐさからして本当の関係も知っている気がする。


「そうですか幼馴染ですか。それを聞いて安心しました。私はてっきり婚約関係にあるとでも思っていましたからね」


絶対気づいてるなこの人。

もう釖竜さんが全知全能の存在に見えてきた。


「そういえば澪未矢君は今日はどうやってお帰りで?暗闇が怖い澪未矢君が一人で歩いて帰るなんて無茶でそうし」


「それなら大丈夫です。今日はしっかり芯珠さんに迎えに来てもらいますから」


「あの使用人さんですか。全く、余計なことをする」


芯珠の名前を出した瞬間に少し釖竜さんの様子が変化したのを感じたので急いでこの場から離れることにする。


「じゃ、じゃ釖竜さんさようなら」


なるべく笑顔で手を振りながら距離を話す。


「...また公民の授業で、澪未矢君」


危なかった。

あの挨拶の感じからしてあのまま釖竜さんと一緒にいたら何が起こるか分からなった。


スマホを取り出して芯珠さんに迎えに来てくれるよう頼む。


それから3分もかからないうちに芯珠さんが車で迎えに来た。


...絶対スピード違反したな。

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