尋問2

日曜日はあっという間に過ぎてしまい月曜日になってしまった。


「それでは澪未矢様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


「あら、わたくしには何も言ってくださらないの?」


「.....」


栄那の煽りには反応せずに芯珠は戻っていった。


「相変わらず可愛げのない使用人ですわね」


車の中に入り栄那の隣に座った。


「いやー今日も相変わらずいい天気だな」


毎回このどうでもいいことを言うところから始まる。


「じゃさっそく」


「その前にシートベルトを締めなさいな」


あ、詰んだ。


栄那は普段シートベルトを締めろなんて言わないがまれに言うことがある。

どういうときに言うかというと本人曰く尋問するときに俺が逃げられないようにするためということらしい。


ちなみにこれで二回目だ。

前回は栄那との昼飯の約束を破って赤条寺と昼食を食べた時だ。


「まずは世間話からはじめましょうか」


絶対世間話じゃない。


「澪未矢さんはこの休日をどのように過ごしていらっしゃった」


この笑顔の前では嘘なんて意味がないな。


「え、えーと赤条寺と...」


「ほうほうほう」


「ちょ、ちょっと不登校になっている生徒の家に」


「ほうほうほう」


「そ、その生徒を学校に来させるように、3人で、デートを...」


「デート?」


アカンやつや。


通常の怒り状態の栄那はほうほうほうと連呼していただけだが、それを中断して俺の言ったことを聞き返すときはホンマにアカンやつや。


「で、デートと言ってもただ3人と一緒に遊んだだけでしてね」


「.....」


「だから実質デートじゃないというかなんというか」


「......」


「まぁとりあえずその生徒の悩みは解決できたからハッピーエンドかなと」


何がハッピーエンドやねん!今の状況からして明らかにバッドエンドやん!


「......」


「......」


そこからはただ気まずい雰囲気になった。


これはさすがにバッドエンドかな?

今すぐに志望というのはなさそうだが学校に着いたらいきなり刺される可能性だってある。


栄那の場合は刺すどころか銃とかで撃ってくる可能性がある。


「わたくし」


いきなり栄那が口を開いた。


思わず身構える。

この距離だからヘッドショットをきめられる可能性がある。


「わたくしすっっっごく感激いたしましたわ!」


「え?」


いきなり大声を上げたかと思うと感激したなんて言い出した。

今の状況で何に感激する必要があるんだか。


「それでこそわたくしの許嫁でしてよ!」


何言ってるんだこの娘は?


今までも映奈の言っていることが理解不明なことは何回もあったが今回のは別の意味で理解不能だ。


「赤条寺さんとかいう悪女に脅されながらも不登校になっている生徒の悩みを解決するという偉業を成したのですわね!」


つまり俺がもともと不登校生徒の悩みを解決するために出かけたところを運悪く赤条寺に見つかってしまい強引にデートに連れていかれたが、俺がそれにも負けず不登校生徒の家に行き悩みを解決したと思っているのか?


実に俺にとって都合のいい考えだ。


「そ、そんなに凄いことかな」


もしそれが本当なら凄い偉業だがここはあえて鈍感正義キャラを演じておく。


「わたくし、こんな素晴らしいお方の許嫁となれて幸せです!」


車の中だというのも本当に大声で話し続ける栄那。


何とかバッドエンドは回避したのかな...?


「もうこんなお方の許嫁であるというのが誇りでたまりません。この誇りをぜひとも皆様に見届けてほしくなりましたわ」


「それはよかっt...皆様?」


皆様に見届けてほしいとか言った?


「そうと決まれば今日は学食で昼食をしましょう!」


学食か。

そういえばまだ成陸学園に行ったことがないな。

これは好都合


「そこでまた食べさせ合いっこしましょう!」


どこが好都合なんだって話で。


校庭でもあんな殺気のこもった視線をたくさん浴びたのに学食となるといよいよ洒落じゃ済まなくなってきた。


「今日はどのメニューにしましょうか。わたくし、今はまだ学食を利用したことはないからメニューをよおご存じないのですけれど。澪未矢さんはご存じでして?」


こんなテンションが高い栄那にやっぱ学食やめない?なんて聞いたら今度こそバッドエンドだ。


「さ、着きましてよ澪未矢さん。今日は手を繋ぎながら体を密着させるような体勢で教室まで向かいましょう」


これは違う種類のバッドエンドになりそうだ。

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