妹と庭で
休日とは言っても日曜日はあまり好きじゃない。
夕方になるとまた明日からだるくて長い一週間が始まると実感してしまうからだ。
「昨日はいろいろとあったからもう今日はゆっくり休もう」
昨日は秋葉美沙祢の不登校問題を解決するべく俺と赤条寺と秋葉の3人で映画館と観覧車に出かけたのだ。
多分あの感じだとだいぶ秋葉の悩みを解決できたと思う。
まぁ俺は特に何もやってないけど。
「こういう家にいる時こそエロゲを一日中プレイしたいのにな」
芯珠に言えばPCぐらいは用意してもらえるかもしれないな。
「そうと決まれば早速芯珠さんを探しに行くか」
いつも芯珠さんはどこにいるのだろうか。
今は10時を回っているため掃除は終わっているだろう。
「二階にはいなさそうだしな」
二階は俺の部屋以外はあまり特徴のある部屋はない。
ほとんどが空き部屋だ。
「そういえば神楽の部屋はどこだ?」
神楽とは朝食と夕食の時ぐらいしか会わない。
「とりあえず一階に行けば真珠さんと会えるだろ」
一階に降りていつもの居間に向かう。
「あれ?いないな。いつもならここに神楽と芯珠さんがいる気がするんだが」
食堂の方を見るとやはりいない。
ちなみに今日は芯珠に起こしに来ないでくれといっていたので朝食は食べていない。
「ちょっと一階を探索してみるか」
今まで特に気にならなかったが一階がどのような構造をしているのか全く知らない。
階段の奥の廊下に行ってみる。
「大体は二階と同じような空き部屋ばかりだな」
こうしてみると結構不気味な館だ。
外見は新築なお屋敷みたいな見た目だが中は空き部屋が多すぎてよく心霊番組で取り上げられるような雰囲気がしている。
まぁこんな広いのにたったの3人しか住んでいないので仕方ないが。
「お、ここは」
目の前の扉には”雫”と書かれていた。
つまりこの部屋が当主の部屋らしい。
「どおりでほかの部屋とは少し扉が頑丈なわけで」
はいろうと思ってドアノブを回そうとするもドアノブが回らない。
鍵がかかってるかかってないの次元の話ではないな。
「兄さん、何してるんですか?」
「!?」
いきなり後ろから女の声がしたのでびっくりする。
「な、なんだ神楽か」
後ろには心配そうな顔で俺を見つめている神楽がいた。
神楽は時々あまり感情のない声を出すので一瞬幽霊とも思ってしまう。
「あ、あの兄さん。あまりその部屋は入るのにお勧めしないっていうか...」
あいまいな言葉だ。
「お、お母様があまりこの部屋には入るなっておっしゃっていました」
なるほどそういうことか。
とういうか自分の母親のことをお母様と言っていることから神楽の育ちの良さがよく理解できる。
「そ、そうか。それよりも神楽、芯珠さんを見なかったか?」
「芯珠ですか?多分今の時間はお庭を掃除していると思いますが...」
ほぼ一日中掃除してるのか。
「何か芯珠に伝言なら私が伝えておきましょうか?」
「い、いやそこまでしなくてもいいよ」
なんか神楽にPCが欲しいなんて言ったらいろいろと誤解を生む気がする。
「兄さんこの後何か予定でもありますか?」
「今日?今日は特に何もないけど」
「ならちょっとだけ久しぶりに二人で庭で遊びませんか?」
「庭で?」
確かに庭は広いが遊具なんてあったか?
「遊ぶといっても昔の思い出に感傷に浸ろうというだけです」
こうして二人で庭に出て大きなベンチに座る。
「昔はよくここらへんで二人でかくれんぼでもしてよく遊びましたね」
「ああ」
「迷子になって二人で泣いたこともありましたね。しばらくして芯珠に見つけてもらってお母様に叱られたこともありましたね」
「ああ」
さっきから”ああ”とか言ってよく覚えてる風な返事をしているが何のことかさっぱりわからない。
さっぱりわからないが神楽には兄とのいい思い出がたくさんあるそうだ。
「本当にあの時は二人でいつまでも遊んでいられたのに」
子供の時は鬼ごっこやかくれんぼを飽きずにいつまでもできたものだ。
今は運動不足過ぎてとてもじゃないがそんなことはできない。
「今はあまり兄さんは私にかまってくれない」
少しブラコンなところも神楽の可愛いところだな。
「あの栄那とかいう女のことばかり」
ブラコンもかわ
「あんな女が兄さんと登校や食事だなんて私は認めない」
ブラコンも...
「ましてや許嫁ですって!?私は絶対に認めいないミトメナイミトメナイミトメナイミトメナイ」
これはブラコンをはるかに凌駕してるな。
「か、神楽さん」
「はい、なんですか兄さん」
切り替え早。
どうやったらとっさにあの状況からこんな神々しい笑みを浮かべることができるんだよ。
「せっかくだからさ庭で二人で昼食でもとらない?」
「そうでした。そのために兄さんのをここに連れ出したのにすっかり忘れてました」
連れ出すってなんか言い方怖いな。
「ちょっと待っていてくださいね。今弁当を持ってきます」
神楽は自室まで弁当を取りに戻っていった。
そこからはこの説明できない不気味さが漂う庭を一人眺めていた。
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