生徒会長の威厳

「......」


「......」


「......」


なぜ今3人で無言で駅まで歩いているかというと数時間前までさかのぼるる。


秋葉の家で赤条寺が3人でデートしようと提案して、いつものように


「それじゃ先輩、ここら辺の遊び場とか適当に検索してください」


という無茶ぶりをしてきた。


確か最初は遊園地に行くとか言っていたが、ここら辺に遊園地なんて見当たらない。


デートといえばやはり定番は映画館なので二駅先ぐらいの映画館に行くことになった。


映画館につくと今上映している映画のポスターを見ながら何を観るか決めることになった。

今の時期は映画氷河期と言われているぐらいつまらなそうな映画しかたやってない。


恋愛系ばっかだったが正直実写の恋愛映画は安っぽくて観てるこっちが恥ずかしくなるから避けたい。


そう思っているといきなり赤条寺が恋愛系映画のポスターを指さして


「これが観たいです」


といってきた。


赤条寺が観たいといったのは用がの恋愛映画でどうやら80年代ぐらいに上映した映画をデジタルリマスター化した作品だ。


まぁ方がの恋愛映画よりはマシな気がしたのでとりあえずそれに決めた。

だがここで俺は気づくべきだった。ポスターに小さくR15+と表記されているのを。


内容はもうヌードシーンが何回もあって正直映画の内容はほとんど覚えてない。

まさかデートであんな映画を観るはめになったとは。


「...一応言っておくけど私は普段二人が同人誌やエロゲで一日を過ごしてるのを考慮してあの映画をチョイスしたのよ」


今のは絶対後付けだろ。


「ちょっと待って!このマウント大好き先輩はともかく私はエロゲなんかプレイしたことないから!」


「いや、俺もさすがに同人誌やエロゲで一日を過ごすほど暇ではないぞ!あとあのマウントは赤条寺の嘘だから」


俺たちの反応を見ていた赤条寺が口を開いた。


「あら?秋葉さん偉く元気になったじゃない。さっきまでは私たちにもう帰ってとか言っていたのに」


「べ、別に元気になんかなってない」


秋葉が少し顔を赤くして言い返す。


そうか。秋葉が元気になるというここまでを先読みして赤条寺はわざわざあの映画をチョイスしたということか。

さすがは成陸学園の生徒会長だ。

...多分ただの結果論にすぎないと思うが。


「で、この後はどうするわけ?」


「そうね。先輩、ここらへんでほかのデートスポットとかないですか?」


「そう次々にあるわけ...ん?あれは」


俺たちが向かっている駅の奥に観覧車が見える。


「観覧車ね。確かに映画館の次に定番ね?」


「さ、3人で乗るの?」


「当たり前でしょ。2人はギャルゲでヒロインの好感度を上げるために何回も利用したでしょ?」


「「だからその偏見やめろ」」


秋葉と声が重なった。


とりあえず俺たちは観覧車の乗り場まで移動する。


3人分のチケットを買い観覧車が回ってくるのを待つ。


もちろんチケット代は俺のおごりだ。


「では、こちらへ」


スタッフに案内され中に入る。


「意外と狭いな。3人がだとちょっと窮屈じゃないか?」


「いいですよそういう俺は降りようか?とか言ってヒロインに自分のやさしさをアピールするようなギャルゲ初心者がかましそうなムーブは」


先読みが凄い。

まぁ俺の場合はただ単に本当に窮屈だったため降りようとしただけだが。


「き、綺麗」


ある程度上まで行くと秋葉が窓から夜の街の景色を見てそう呟く。


「ねぇ秋葉さん。そろそろ学校に来ない本当の理由を話してくれないかしら」


なるほど、この綺麗な景色を利用する作戦か。


「...実は前にさ、部活終わりに一人で自主練してた時にさ、手首を捻っちゃってさ。おそらく当分大会に出られないって」


「そういえば女子テニス部は大会が近いわね」


「大会が近いのにエースの私がけがで出られないなんて情けなさ過ぎるじゃん?情けなさ過ぎて学校なんて行けないよ」


秋葉の目には涙が浮かんでいる。


つまり周りからの期待に応えることができない状況が怖いため学校にこなくなったと。

ただこの場合俺たちに何ができる?


俺が秋葉にかけるべき言葉を探していると赤条寺が言葉を紡いだ。


「秋葉さん、あなた少し自分を過大評価し過ぎじゃないのかしら」


「え?」


「あなたがエースって誰が決めたの?部員?それとも顧問の先生?」


「そ、それは」


「女子テニス部にはあなたに追いつこうとあなたに負けないぐらい努力している生徒だっているわ。本当のエースってのは目標にしている人に負けないぐらいの努力をしている人のことを言うんじゃないのかしら」


「!?」


「それにあなたにとっての学校に来る意味っていうのはテニスをすることだけだったの?友達やクラスメイトと一緒に勉強することは?一緒に遊んだり共通の話題を話し合って笑ったりすることは?

あなたにとってはこれらはどうでもいいことなの?」


「......」


「私は許さないわよ。そんな少女漫画で同性同士に嫌われるような主人公又は主人公の友達みたいなムーブを成陸学園の女子生徒がかますのは」


おい。

今の一言で真面目な雰囲気が全て吹き飛んだぞ。


「フフフッ」


秋葉が笑う。


「やっぱりこの学校の生徒会長は変わってるね。大事な場面でそんなことを言うなんて...フフフ」


「私は一応真剣に話しているんだけど」


「それは分かってるけど...フフフッ...なんかもう悩みなんてどうでもよくなってきた」


観覧車が地上につき、外に出る。


「じゃね空気が読めない生徒会長とエロゲ大好き先輩」


そう言って一人で駅の方に歩いていく秋葉。

てかエロゲはが好きなのはむしろ赤条寺の方だろ。


「...これで一件落着ですね」


「まさかここまで全部想定していたのか?」


「ええ、今日のために何回学園もののラノベを呼んできたと思ってるんですか」


そこまでする?


「とりあえず今日は疲れたんでもう帰りましょう」


「そうだな」


二人で駅まで歩く。

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