不登校解消作戦
今日は芯珠に起こされるよりは早く起きることができた。
「今日はどれを...まぁこのスーツっぽいのでいいか」
ここまでくると全部同じに見える。
着替えて一回まで降りる。
一階には朝の掃除をしている芯珠の姿があった。
「澪未矢様、もうお目覚めになられたのですか!?」
芯珠が今までに見たことない顔で驚いている。
「ああ、今日はちょっと出かける用事があって」
「そうですか、神楽様には私の方から伝えておきます」
こういうのも逐一神楽に報告しなきゃならないのか。
もしかしてこの家の階級としては俺が一番下?
「朝食はどうなさいますか」
スマホの時間を見ると6:50と表示されていたので遠慮しておく。
「...かしこまりました。ただ昼食は必ずとるようお願いします」
朝食はおそらく赤条寺が作ってくれるので問題はない。
いろいろと出かける準備をしているとインターホンが鳴った。
「どちら様でしょうか?こんな朝早くから」
芯珠が出ようとする。
ここで今までの芯珠と栄那のやりとりを思い返す。
もし毒舌な赤条寺と芯珠が鉢合わせにでもなったらどうなるだろうか。
二人が面識ある保証はどこにもない。
やはりここは止めるべきだろう。
そう思った時にはもうすでに足が動いていた。
「し、芯珠さん。大丈夫だから!その客は俺が面倒を見るから」
急いで芯珠の前に行き、戻るよう促す。
「そ、そうですか。では対応は澪未矢様にお願いします」
俺の思い切った行動に芯珠も少し驚いた様子を見せる。
「おはようございます先輩」
門の外にはやはり不機嫌な顔をした生徒会長が立っていた。
「...なんで俺の屋敷を知ってるんだ」
「自分の家を屋敷だなんて言わないでください。なぜ知っているのかというと常に先輩から匂うイカの匂いを頼りに来ました」
今のは完全にアウトだな。
「それで、どうやって秋葉美沙祢の家に行くんだ?」
「な、なんで私が秋葉美沙祢さんのおうちに行くって知ってるんですか?」
そのわざとらしい演技やめろ。
「どうやってって、もちろん電車で行きますよ」
「電車?」
電車といってもここらへんで通ってるのを見たことないが。
「少し歩けば駅がありますよ。先輩の家は駅から徒歩20分ぐらいだと思いますけれど私の家は駅から徒歩3分ぐらいです」
駅近マウントやめろ。
大学でもそういう奴よくいた。
「先輩今なんで駅から徒歩3分なのに、わざわざ徒歩20分の俺の家まで来るんだよって思いましたね?」
そう思う可能性はあったが。
「べ、別に先輩のためにわざわざここまで向かいに来たわけじゃないんですからね!」
だからそのツンデレ演技やめろって。
「まぁとりあえずツンデレの安売りはここまでにしておきます。先輩をわざわざ同行させる理由は最後の切り札になるからですよ」
「最後の切り札?」
「いくら説得しても家から出てこなかった場合や秋葉さんが私をイラつかせるような行動をとった時に先輩に動いてもらいます」
なんでそんなけんか腰なの?
「さすがに先輩の家までの道を往復するのは疲れましたね。先輩、どうせありふれたテンプレオタクキャラの先輩のことだから家にメイドとか雇ってるんでしょ?そのメイドに車出してもらいませんか?」
なんかそれはまずい気がする。
「大丈夫です。メイドも一緒ならもっと強い言葉で先輩を罵ってあげますから」
なら絶対だめだ。
というかどんだけ俺のことをドMだと思ってるんだよ。
「先輩ってメイドに汚物でも見るような目で見つめられたりするプレイも好きなんですよね?」
「そんなことは一言も言ってはないが」
まぁ今までそういう同人誌を何冊も読んできたが。
「とりあえずメイドはちょっと忙しいみたいだからタクシーでも呼ぼう」
「もちろん先輩のおごりですよね」
...それは当然だが。
スマホでタクシーを呼ぶアプリを起動する。
その途中で。
「先輩の検索履歴見せてくださいよ」
とか言ってくるので警戒しながらタクシーを呼ぶ。
確かにこのスマホは”おれ”のじゃないためそういう検索ワードが必ず出てくるわけではないがエロゲの主人公って言う肩書があるため信用できない。
「あと10分後ぐらいらしい」
「意外とかかるんですね」
「まぁここら辺は田舎だからな」
屋敷を立てられるぐらいの広い敷地は田舎にしかない。
「それで赤条寺、どうやって秋葉美沙祢の不登校を解決するんだ」
これを聞かないことには始まらない。
「まず私が家から出てくるように説得します。ただもしそれでも出てこなかった場合にはギャルゲを熟知しているであろう先輩の手も借ります」
別にギャルゲが上手いというわけではないが。
「家から出てきたあとは三人で遊園地などに行って遊びます。もちろん先輩のおごりで」
......
「3人で遊んでいる途中で必ず秋葉さんの心に友達と遊ぶのは楽しいという気持ちが生まれ、それを利用して学校に来させます」
「......」
...なんか赤条寺にしては随分可愛らしい作戦だな。
「なんですか先輩?まるで見直したぞみたいな顔をして」
「いや何でもないよ」
そんな会話をしているうちにタクシーが到着した。
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