尋問
「今日はなんか時間が過ぎるのが遅かった気がする」
まず1,2限から釖竜さんの公民の授業。
3,4限はトイレであぼっていたら赤条寺につかまり罰掃除からのbadendへの伏線を作ってしまった。
放課後は不登校生徒についての会議。
高校生ってこんなに忙しかったっけ。
俺の高校生活といったら授業はずっと寝てて部活にも委員会にも所属してなかったから誰よりも早く帰宅した。
そこからはゲームしたり同人誌読んだりして暇な時間しかなかったのにな。
「お腹空いたからとっとと帰るか」
校門を出ようとすると見たことのある車が目の前に泊まった。
「これはこれは澪未矢さん、これからお帰りで?」
中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
もしこの場で選択肢が出たら。
1.逃げる
2.無視する
3.死んだふりをする
の三択しかない。
どれを選んだところでbadendまっしぐらであるが。
「こ、こんにちは栄那。え、栄那も今お帰りなのかな」
なるべく愛想よく話しかける。
「ええ、ええ。わたくしも今から帰るところでしたの。ほんと奇跡の偶然ですわね」
「確かにこれは奇跡だなー。ははは」
なぜ俺がこのように無理に明るく話しているかというと、栄那の笑みが普段とは違く今にでも俺の首をめがけて刀を振り下ろしてくるような威圧感を漂わせているからである。
「それじゃー俺は帰るとするかな。栄那、また明日ね」
さりげなくその場から逃げようとする。
もしかして成功する...
「あらあら連れないですわね。せっかく偶然会ったのですから遠慮せずに乗っていってもよろしいんですのよ」
「遠慮しておき」
「乗ってくださいますわよね?」
「...はい」
するわけなかった。
観念して栄那の隣の座席に座る。
「澪未矢さん、一応シートベルトを着けてくださる?」
「え、でも前は必要ないって言わなかった?」
「今日は必要ありますの。澪未矢さんが逃げないようにするため」
これはマジで伏線回収になりそう。
「それで澪未矢さん、今日わたくし”なぜ”か異様に気分が昂ってグラスを5本も割ってしまいましたわ」
「そ、それは災難でしたね」
「ええ、とっても災難でしたわ。澪未矢さん、こうなった原因に心当たりはございまして?」
「...ございます」
そんなまじかて殺気あふれる笑みをされたら誰でも観念してしまう」
「本当に申し訳ございませんでした!」
渾身の土下座を披露する。
土下座といってもシートベルトを締めているため、ただ深々と頭を下げているだけだが。
「...それは何に対して謝ってるんですの?」
「きょ、今日栄那斗の約束をすっぽかして一人でお昼ご飯を食べてしまったこと」
「一人で?」
「...厳密に言えば後輩と二人で」
もう全部言うしかない。
「その後輩というのはあの赤条寺さんとかいういけ好かない女でございまして?」
「はい、その通りです」
「ほおほおほおほお」
そのほおっていうのやめてほしい。
「まぁあの女に強要されたということであれば許しましょう」
「いや別に強要とか」
「されたんですのよね?」
「...されました」
今普通におしっこちびりそうになった。
「こうなることを予想していたのでわたくしも生徒会に立候補したかったのですがそれをあのいけ好かない女にとめられまして」
とりあえずなんとかbadendは耐えたな。
「それにしても本当に醜い女ですわね。わたくしの澪未矢さんに強要するなど」
そういえば明日赤条寺は多分俺と一緒に秋葉美沙祢の家にいくきだろう。
でも行ってどうするんだ。先生も家に入れなかったぐらいだから素直に出てくるとは思えないぞ。
「醜い、醜い、醜い、醜い、醜い、醜い、ミニクイミニクイ」
まぁ赤条寺のことだからそれぐらいの対策は考えているんだろう。
牧下先生にあんな啖呵を切ったんだからな。
「ミニクイミニクイミニクイミニクイミニクイミニクイミニクイミニクイ」
...そろそろさっきから隣で呪文のようなものを唱えているヤンデレについて触れてもいいのだろうか?
「ミニクイミニクイミニクイミニクイミニクイミニクイ、非常に醜いですわね」
このタイミングだ。
「え、栄那?とりあえず落ち着かないか」
「...!?...これは失礼しましたわ。こんなところを許嫁である澪未矢さんに見られるとは」
「い、いや大丈夫だよ。気にすんな」
俺のせいだが。
そうこうしているうちに家が見えてきた。
家の前では今日は芯珠ではなく神楽が立っていた。
「お帰りなさい兄さん。もう夕食は芯珠が作ってくれましたから早く...」
「これはこれは神楽さんじゃありませんか」
やばい、朝の続きになる。
「なぜあなたが兄さんと一緒に帰ってきているのかは聞きませんが早くお引き取りを。正直こうしてあなたがここに存在しているだけで臭すぎて死んでしまいそうです」
...言い過ぎだ神楽。
「ほんと言葉に品がない妹ですわね。いい加減ブラコンを卒業したらいかがでして?」
「っ!」
その一言を聞いて堪忍袋の緒が切れたのか神楽が栄那に近づく。
これはさすがに止めなくては。
「ま、まぁとりあえず早く夕飯食べようか神楽」
「に、兄さん」
妹を後ろから抱きかかえるようにして家まで連れて行く。
「それじゃ栄那また月曜日な」
「.....」
あれ?いつもならここで優雅にお別れの言葉を言う栄那なのに今日はやけに不機嫌そうに立ったままだぞ。
あとから気づいたのだが、この時俺は完全に神楽の胸を掴んでおり、当然その場面を観させられた栄那がどういう感情になるのかというと...あまり想像したくない。
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