生徒会への依頼

5,6時間目はサボらずに出た。

いつ赤条寺が観察してるか分からないからな。


「結局放課後にまた会うんだけどな」


今日はまた掃除させられるのだろうか。

だとしたら流石に鞭はやめてほしい。


「...エロゲだからっていきなりsm展開になるのはごめんだ」


そういうエロゲももちろんプレイしたことはあるが。


6時間目の授業が終わり帰りのホームルームが始まる。


「...では皆さんさようなら」


なんか今日は先生の機嫌がいい気がする。


「そういえば澪未矢、お前今日の昼はどこで食べたんだ?」


「あー今日はちょっと生徒会室で一人で食べてたんだ」


流石に赤条寺と食べてたなんて言えない。


「そういうことか。今日は校庭にお前の姿がなかったって栄那ファンクラブの連中が喜んでてよ」


だから先生珍しくあんな機嫌よかったのか。


「でも栄那ちゃんは怒っているぽかったぜ」


「...どれぐらい」


「一人で笑いながらグラスを五本ぐらい割ったらしい」


「......」


まぁまだbadendの範囲じゃないだろ。


「そ、そうか。とりあえず俺は生徒会の活動があるから先行くわ」


「おう、じゃあまた明日な」


長谷川と別れ、生徒会室に向かう。


「失礼します」


一応小さい声で挨拶をしながら生徒会室に入る。


「...声が小さいのでやり直してください」


そう声がした方を向くともうすでに赤条寺が会長席に座っていた。


「きょ、今日も早いな赤条寺」


「私はいつもこれぐらいの時間に来ていますけど。昨日はたまたま職員室に鍵を取りに行っただけですが」


「そ、そだな」


「なんですか?もしかして煽ってるんですか?言っておきますが先輩がマウントを獲れるのはよくエロゲに出てくる主人公の彼女を寝取ろうとするクズキャラや何股もかけるクズ主人公ぐらいですよ」


もしかしたら俺がそのクズ主人公かもしれないという可能性があるためうまく受け流せない。


「それよりも先輩、もう一度やり直してください」


相変わらず饒舌なことで。


それから結局5回ぐらいやり直しさせられた。

正直凄く無駄な時間だと思う。


「そ、それで会長、今日はまたトイレ掃除に」


心の中ではそうじゃないであってくれと願う。


「いえ、今日は少し私の同学年の生徒で何やら不登校になっている生徒がいるということを知りまして、今からその生徒の担任の先生とそのことについて話してきます。もちろん先輩にも同行してもらいます」


俺来る意味ある?


とはいえさすが生徒会長だ。

不登校になっている生徒をすでに特定しているとは。


それから俺たちは職員室でその担任の先生を呼びに行き会議室で待機することになった。


「ごめんごめん、部活の方が忙しくて遅れちゃったよ」


そう言いながらその子の担任の先生が入ってきた。


「それでは牧下まきした先生、その現在不登校になっている秋葉美沙祢あきばみさねさんについて詳しいことを話していただけますか?」


牧下先生から語られた話は要約するとこうだ。


まず秋葉美沙祢あきばみさねという娘はもともとかなり明るい性格をしており友達も多かった。

部活も女子テニス部に所属していてそれなりの活躍をしていたそうだ。


だが今月の上旬からあまり元気がなくなり、勉強の成績も落ち、部活にもあまりでなくなった。

それからはしばらくすると学校にも全く来なくなった。


ということだ。


「原因の一つとしてまず考えられるのは人間関係の悪化でしょうか」


俺もそれは一番初めに考えた。

子供というのは残酷な生き物で、昨日まですごく仲が良かった人がある日突然自分に対して敵意を抱くということがある。

しかもだいたいその原因となるのは些細なことだ。


「二つ目は家族関係のことでしょうか」


これもよくある話だ。

例えば両親が離婚なんてしたらぐれてしまう子どもも少なからずいる。


「いや、それについてはないと思うよ。もともと秋葉君は小さいころに両親が他界してずっと施設で育ってきたから。今は一人暮らしをしてるはずだよ」


牧下先生が言葉を紡ぐ。


高校一年生で一人暮らしとは感心する。


俺の場合大学生になってから一人暮らしを始めた。

しかも家賃やその他の生活費は全部親負担である。


「なるほど。だとしたらやはり学校での人間関係が原因みたいですね。牧下先生は秋葉さんの家に家庭訪問に行ったことは?」


「何回もあるよ。でも一回も中に入れてくれたことはないね」


それはだいぶ重症だな。


「分かりました。これだけ聞ければもう十分です。今日はありがとうございました」


「何とかできそうかい?」


「はい。成陸学園生徒会長である赤条寺紅愛の名に誓って必ず秋葉さんを元気に学校に通わせると約束しましょう」


「そう言ってくれるとありがたい。それじゃよろしく頼むよ。また何かあったら何でも言ってくれ」


そう言って牧下先生が会議室から去っていった。


「あの、先輩?」


「ん?」


「ん?じゃなくてなんで一言もしゃべらなかったんですか?」


「え?俺がなんか言わなければいけない場面あった?」


「こういうシリアスな場面で何か的外れな発言をして私に華を持たせるエロゲによく出てくるモブキャラの役割をするのが先輩の仕事でしょ」


なんて理不尽な。

というかこんなにエロゲという言葉が出てくると赤条寺が何か知っているのでは?と疑ってしまうがおそらくそういうことでもないらしい



「もう怒りました。先輩、明日は休日ですけど私に付き合いなさい」


「え、それって」


「ここまで言えばわかるでしょう。これも生徒会長の務めです」


...なんだかんだ言ってやっぱりいい生徒会長だな。

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