生徒会長と掃除と食事
苦痛の1,2時間目を過ごしてそのまま3,4時間目をトイレでショートカットする。
2時間連続体育なんて行くわけない。
「早く授業終わんないかなー」
トイレでスマホをいじりながらそう呟く。
多分長谷川君は運動音痴だな。
俺も人のこと言えた義理ではないが。
俺が体育で特に嫌いなのはチーム決めである。
友達が少ない俺は絶対あまりものになるし、先生にお願いにより陽キャグループのチームに入れられたりなんかしたら最悪だ。
「てか俺って勉強も運動もできない何のとりえもない陰キャじゃね?」
そう思うと泣きそうになる。
まぁ夜崎澪未矢がそうとは限らないが。
「...!」
足音がする。
まぁそれは当たり前だが転生する前はホラー系ノベルゲーとかやっていたからつい反応してしまう。
その足音は俺のいる男子トイレの前で止まった。
少しづつ俺の個室に近づいてきているのが分かる。
「え?これまじなやつ?」
そう思うと金縛りにあったかのように体が動かなくなる。
「......」
言葉も発せなくなる。
もうこれはダメだと思い、必死に手を合わせて足音が遠くに行ってくれることを願う。
「...何してるんですか先輩?」
「え?」
顔を上げるといつの間にか個室のドアが開かれていていて、目の前には生徒会長である赤条寺紅愛が立っていた。
「わ!?」
びっくりして後ずさりする。
「情けない驚き方するんですね、先輩は」
「せ、赤条寺?なんでここに?」
「それはこっちが聞きたいですよ。せっかくの自習の時間を削ってまで先輩を観察...じゃなくてしっかり先輩が生徒会の名に恥じないような授業態度をとっているか確認しに体育館に行ったのに先輩はこんなところで何してるんです?」
今の話でいろいろとツッコミたいことがある。
まず今授業中だよね?自習ってことは先生が休みってことかな?だとしても抜け出してることに変わりないが。
次になんで俺のクラスの時間割を知ってんねん。あと一瞬観察って言ったのを誤魔化そうとしたけど全然誤魔化せてないし。
あとなんで俺の居場所が分かった?それになんで男子トイレに入ってきてる。
「どうせ陰キャな先輩のことだから男子トイレでサボってエロ動画とか見ていると思っていましたが案の情でしたか」
あーそういうことね。
エロ動画は見ていないが。
「で、でも男子トイレに入ってくるのはどうかと思うぞ。それに個室のカギは?」
「カギなんてかかっていなかったし、生徒会長である私が男子トイレに入ったとして何か問題でも?」
この娘、生徒会長の権力を拡大解釈してるな。
「まぁいいです。先輩には罰として私に付き合ってもらいます」
それだけで許してくれるのか。
案外優しいのかも。
「そ、それで付き合うとは具体的に何に?」
「生徒会室と女子トイレの清掃に決まってるでしょ」
「......」
体育よりましと考えよう。
結局生徒会室と女子トイレの清掃は昼休みまで長引いてしまった。
「...こんなことになるなら普通に体育に行けばよかった」
というのもこの生徒会長がめっちゃスパルタなのである。
昨日の女子トイレでもいろいろとダメ出しされたが、今日はその比にならない。
途中鞭のようなものを持ってきて
「いつもSM系の同人誌やASMRを読んだり聴いたりしている先輩にとってはやる気が出るでしょう」
とか言ってそれを思いっきり床に叩きつけてきた
ドMの俺でもさすがにビビった。
てかその鞭のせいでもっと床が汚れているように見えてしまった。
「先輩のせいで昼休までかかってしまいました。まぁ先輩には全く期待していなかったので予想の範囲内でしたが、ええ全く期待していませんでした」
本当に失望したみたいな言い方は少し心に来る。
「罰を追加します。先輩、今日はわ、私と一緒に昼ご飯を食べなさい」
...今なんて言った?
「こ、こういうこともあろうかせ、と先輩の分の弁当も用意してきました」
なんで用意してんだよ。
「私も先輩とお昼ご飯なんか取りたくありませんが...これは罰なので仕方ありません。ええこれは罰です。仕方なくです」
急にツンデレキャラになったな。
いやそんなことよりもさすがにこれは承諾できない。
栄那との約束を破るなんてbadendまっしぐらである。
「い、いや俺はほら、先着があるっていうか」
「が、頑張って作ってきたのに食べてくれないんですか...」
その泣きそうな顔やめろや。
典型的なツンデレキャラやん。
...おそらく演技なのだろうが。
このヤンデレヒロインしかいないゲームでツンデレとか需要しかない。
それに大体こういうエロゲはツンデレヒロインを選ぶとハッピーエンドに到着する。
まぁもしbadendになってもやり直し昨日とかあるかもしれないからな。
「わ、分かった。せっかく赤条寺が作ってくれた弁当を食べないわけにはいかないからな」
「そうですか。ならもうツンデレ口調はやめますね」
「え?」
口調?つまり演技だったってことか?
「なんですか先輩?まさか私がそこら辺のラノベやエロゲによくいる量産型ツンデレヒロインだとでも思ってたんですか?」
......
完全に騙された。
でも食べるって宣言したからには食べないわけにはいかない。
そう思いながら無言で赤条寺の弁当を口に運んだ。
一方その頃
「ほう、ほう、ほう」
一人校庭の豪華なテーブルに座っている少女は何か愉快そうに笑っていた。
「なかなか愉快なことをしてくれますのねぇ、澪未矢さん」
彼女が持っているグラスにヒビが入ったのは気のせいじゃないだろう。
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