幕間

衝動だった


というか告白というのは、衝動でなければ出来ないものだ


6月の放課後


昇降口で帰りがけの先輩を捕まえた


今思えば、よく誰にも見つからなかったものだ


野次馬がいてもおかしくなかったけれど、奇跡的に目撃者はいなかった


言うつもりは無かった


何度も想像はしたけれど、本当に言うつもりは無かったのだ


わたしの告白はいつもそう


頭では、いつもちゃんと、仕舞っておこうって判断が出来るのに


どうしても、伝えたいって


知って欲しいって、分かって欲しいって


好きなんだもん


わたしの事、知って欲しいって、伝えたいって思うのは同然でしょう?


同じ思いで返してなんて、そんな贅沢な事言わないから


大声で呼び止めたわたしへ振り返って、呆れたように笑うあの人を見て


魔が差した


理性なんて、正しい判断なんて何処かへ消え去って


気が付いたら口から洩れていた


告白


わたしはなんて言ったんだっけ


でもそんなに、回りくどい言葉じゃ無かった気がする


あの人は苦い顔をして


一瞬で、ああ無理だなと悟った


告白の返事だけじゃない


明日からただの先輩後輩に戻るのは、もう無理だ


だけど、あの人は、わたしを拒絶しなかった


ただ、自分の方に問題があるから諦めろと言った


今思えば、ただあの人の方がマイノリティだから、それだけかもしれない


でも、もう手遅れだ


わたしはまた、あの人を好きになった


諦めさせてくれない先輩が悪い


わたしは悪くない


さあ、次に会ったらどうしようか


可能性なんて無いくせに、わたしを離さない先輩へ


どうやったら、この気持ちの行き場を教えてくれますか

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