第19話  シンヴァ、迎えに来る

 マーティンが、騎士団の試験を受けに行くと間もなく、シンヴァがタオを迎えに来た。


 ラルク家の生活に馴れていたメアリ・タオは、ルルティアとの別れがとてもつらかった。

 メアリ・タオとルルティアは、抱き合って泣き、再会を約束して馬車に乗り込んで行った。

 ルルティアは、馬車が見えなくなるまで、手を振っていた。


 ♦


「シンヴァさん!!もう、タオのこと忘れたのかと思ってたよ~」


「仕事が忙しかったんだよ。お前の学費を貯めるのに奔走してたからな」


 閉じられたこの森へは、限られた人しか出入りが出来ないのだ。

 その日、珍しく来客があったと思ったら、シンヴァだった。


 姉から、十分に人に馴れ、字も覚えたからそろそろ、学び舎に戻してはどうかと打診があったのだ。



「タオの学費を何でシンヴァさんが出すの?」


「おっ!!良いね!その質問。少しは大人になったな。メアリ」


「だって……シンヴァさん、タオとは他人だよ」


「分かんないだろ~~!!お前、学び舎の逆指名制度を知らないだろ?」


「何それ?」


 シンヴァは、得意げに話した。


「学び舎を首席で卒業すると、魔法の師を自分で選べるんだぞ。俺は、迷うことなくセルグ師を選んだね。で、セルグ師に頼み込んだんだよ。お前の学び舎への編入を!!」


「今の言い方だと、シンヴァさんは首席で卒業したの?」


 タオはビックリだ。


「当たり前だ」


 シンヴァは仁王立ちで胸を張って見せた。



「何時、学び舎に行くの?」


「今からでも行くか?」


「はい」


 シンヴァは胸が熱くなった。二年前には出て来なかった言葉だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る