第18話  風の精霊と契約?

 風の精霊のエウレカは、マーティンと対峙して立っていた。

 エウレカの手には、半透明の剣も視えている。


 何故こうなっているのか、マーティンには理解できていない。

 朝起きたら、いつもの風の精霊が等身大になって戦士の格好をして、長い金の髪を頭のてっぺんで1つに括り現れたのだ。

 着替えて、顔を洗い終わった所で、谷長の館の裏の山まで誘われたのだ。


 <強くなりたいなら、ついてきな>


「その格好って、神代の戦の女神の衣装だね」


 <衣装じゃなくて、戦衣だよ!!>


 山の中腹まで行くと、風がビュービューに吹いていた。


 <ここも、風の生まれるポイントの1つだよ>


「だから、僕は精霊とは契約しないってば!!」


 <あたいの名は、エウレカ。レフとの契約は切ってきたから。ほら本名言って>


 エウレカは、マーティンの言うこと等聞く気はなかった。



「僕は、マーティン・ラルクだ」


 <今は、それでいいわ。あたいはこれでも、銀の森の生まれで、ここの精霊達よりは格が上なの。火の魔法使いだった、レフの片腕でもあったし、騎士団では、ずっと、団長だったレフの守護をしていたわ。あたいの力はそれなりに強いのよ>


 自慢げにエウレカは話していたが、マーティンはウンザリしていた。

 どうせ、この精霊もロイルの血がどうので、近寄ってきたに違いなかった。

 ここに来て、凄く思い知らされているのだった。

 人間ではなく、精霊に異常に好かれる自分がたまらなく嫌だった。


「どうせ、君も僕の生まれに興味があるだけだよね?」


 <ああ……そういえば、今の長の甥っ子かぁ……>


 自分で言って墓穴を掘ってしまった。

 それに対して、エウレカはニンマリ笑って言った。


 <じゃなくて、お前の言葉の魔力に惹き付けられるんだ。お前、精霊使いの修行をしたら、良い使い手になるよ。お前のお兄ちゃんよりずっと、優れた……>


「なんで、兄上のことまで知ってるんだ?」


 <風の噂なんて、どこでも吹いてるもんだ。それに、魔法使いは、呪文で精霊を強引に動かすけど、お前は、あたいとこうして話してるじゃん。これって、貴重なんだよ?>


「どこが?」


 <お前の声が魔力を帯びている。お前の優しい性格が身体からにじみ出ている。それが、精霊がお前を惹き付けてる理由だよ>


 マーティンは少し安心した。

 だが、エウレカは止め《とどめ》に言った。


 <神には、敬意を持つから、付きまとうがな。>


 マーティンはガックリと肩を落とした。

 そこに、エウレカは突進してきた。


「え!?」


 物凄い突風がマーティンに向かって吹いてきた。

 マーティンは丸腰だった。

 頭上で木の枝が折れて、小さな精霊が木の枝をマーティンに運んでくれた。

 しかし、こんな小さな枝では、盾にもならずに吹き飛ばされてしまった。


 <嘘~~!!レフは10歳でもあたいの風を受け止めたのに!思ったより身体が出来てないね~!!これは、明日から、特訓だよ!明日から、ここまで、井戸の水を汲んでおいで!>


「何で、精霊の言う事を聞かなきゃならないんだよ!」


 <お前が弱いのが悪い!>


 言い返せないマーティンだった。


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