第10話 メアリ・タオと五人の兄妹
「メアリ・タオ、ここで暫く暮らして字を覚えるんだ。ここの奴らは、ね~ちゃんの教育がなってるから、お前を苛めたりしないぞ!!」
「本当~~?」
タオは、心配そうにシンヴァの顔を見上げた。
「大丈夫だって!!兄ちゃん達から、字も教えてもらえるぜ。お前が、落ち着いて授業を受けれるくらい、大きくなったら迎えに来るからな」
「タオはもうすぐ八歳だってば!」
メアリ・タオはムキになって、反論したがシンヴァは取り合わなかった。
「今のお前は、ただの発育不良だ。年齢並みの落ち着きが出てきたら、迎えに来てやる」
「う~~」
タオは、気に入らなくて
「ほら、そういうところ、な?」
「ホントに、迎えに来てくれる?」
「当たり前だろ!?学び舎にお前の学費を払い込んであるんだ。お前には、立派な魔法使いになってもらわないとな!!」
「タオ~~なれるのかな~~」
「なれるんじゃなく、なるんだよ!そのためにお前を連れて来たんだからな」
「う……ん……」
「よし、良い子だ」
シンヴァは、タオの頭をグリグリして、荷物を持つと、家を出て行った。
紅玉の森は、ロイルの直轄地である。位置付け的には、北部のデュール谷と同じ扱いだ。
ただ、神殿は先代長の長男であるロランに必要以上の権力を与えることを嫌った。
ロランの母は、紅玉の森の森番の娘だったのだ。
先代の長が亡くなった時には、ロランは成人していた。
が、10歳以上離れた、王家の姫君を母に持つ弟が父の嫡子として、育てられていた。彼は、生れた時から若長だった。
身分がそれなりで、後ろ盾のないの美しい娘をあてがい、ロランは半ばこの広大な紅玉の森に、閉じ込められているようなものだった。
それでも彼は、この土地に暮らす民を愛し、家族を愛した。
穏やかな性格の人であった。
「みんな、揃ったな。メアリ・タオ、子供たちを紹介しよう。次男のマーティン、14歳だ、長女のルルティア、おしゃまな12歳、三男のマーゴットは11歳、四男のエリーニは五歳だ。長男のエルンストだけが、魔法の才能があって、今学び舎へ入っている。エルンストは、16歳だ。」
「一人だけ、髪の色が違う?」
タオが叫んだ。次男のマーティンが嫌な顔をした。
ロランは、薄茶色の髪に銀色の瞳をしていた。
エメルダは、砂漠の王族らしく、薄い金髪と、緑の瞳をしていた。
子供達に、銀色の瞳をした者はいなかった。
髪は、マーティン以外母似の薄い金髪だ。
マーティンは見事な銀髪をしていた。瞳は他の兄弟と同じ緑色だ。
意外にもタオが来て一番喜んだのは、ただ一人の女の子だったルルティアだ。
妹が欲しかった彼女は、早速メアリ・タオを自分の部屋に連れてゆき、幼い頃に来ていた服を引っ張り出しては、タオに着せて、ファッションショーを始めた。
「なんて呼びましょうか?私のことはルルで良いわ。」
「タオ……」
「それ、数字でしょ?なんで、名前に数字なんて入ってるの?」
ルルティアは自分が五歳の時に着ていたドレスをタオにあてて言った。
「占い師だったばあちゃんが決めたの……七年前の魚の年に生まれた女の子にはメアリって付けるようにって。」
「ふ~ん、叔父様から、食事もまともに貰ってなかったようだって聞いたわ。でも、もういいのよ、沢山食べて!!それで大きくなるわ!!」
「本当!?」
「ええ……一番上のエルンストお兄様が、やっぱり小柄でね。魔法使いの素質があるって、七歳の時に学び舎に入ったの。」
ルルティアはタオをドレスに着替えさせ、鏡の前に座らせた。
絡みやすいタオのくせ毛をブラッシングしてくれて、横の髪を編み上げて、リボンを付けてくれた。
「どう?栗色のお姫様の出来上がり。」
タオはビックリした。今まで見た中で一番自分が可愛くなっていた。
「わ~お姫様みたい~」
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