第7話 学び舎の劣等生
メアリ・タオは、シンヴァの強い推薦で例外的に編入を許された。
だが、すぐにボロが出た。
メアリ・タオは、机に座っていられずに、先生の言う事も聞かない。
すぐに、窓の外に遊びに来た、精霊を見つけ、勝手に外に飛び出していくのである。
クラスメイトとも打ち解けずにいた。
いつも、風の精霊と仲良くなりたくて、精霊達の集まるリドムの樹に登ってみるが、精霊達はタオを見つけると、逃げて行ってしまう。
避けられているようだ。
それが一層、メアリ・タオを悲しくさせた。
小さいタオを、バカにしてくる子もいた。
新米魔法使いのゴリ押しで入ってきたと詰め寄る子もいた。
(「タオは7歳だモン!!」)
(「シンヴァさんのことを悪く言うな~!!」)
言い返すものの、いつもベソをかいていた。
おかげで、いつも週末ごとにシンヴァが呼ばれ、寮の管理人の巫女から見放されたメアリ・タオの衣類の洗濯に明け暮れるのが日課となってしまった。
「それで?今度は何を言われたんだ?」
「五歳児が来るところじゃないって!!」
「仕方ないだろ?おまえは本当に五歳児並みなんだし。」
「タオ!!もうすぐ、八歳になるモン。」
学び舎の裏の洗濯場で、タオの一週間分の衣類を洗い上げて、シンヴァはタオを見た。
メアリ・タオは目に涙を浮かべている。
「タオ、ずっと一人だったから、どうやってみんなと仲良くすれば良いのか分からない……」
「俺と逆だな、俺には九人の兄弟がいるからな」
「九人?沢山いるね……」
「母ちゃんが三人いるからな、すぐ上の兄貴と、オアシスの貴重な水で泥んご作って大騒ぎになって、アニキともども、学び舎に放り込まれたのさ」
笑ってシンヴァは言った。
「洗濯ついでにお前も洗濯だ。脱げ!!洗ってやる!!」
「寒いよ~~」
タオは、服を脱ぎ始めた。
季節は、夏になろうとしていた。
シンヴァは桶ごとタオに水を浴びせる。
「キャッ!!」
メアリ・タオの小さな悲鳴に声をあげて笑うシンヴァ。
「本当に、お前ってどこの血が入っているんだろうなぁ……
その瞳の色は、元のヴィスティンに多いと聞いたが、赤茶色の髪はリーフス辺りにいるっちゃいるけど……このくせ毛……一度、坊主にするか?髪質が変わるかもしれんぞ」
「や!!」
「まぁ~冗談はさておき、俺はお前の学費を稼ぐために、仕事を選べなくなっちまった。大きな仕事を任されて、当分来れない。何か困ったことがあるなら、今言えよな」
シンヴァの言った言葉に、タオは顔を上げた。
「~~」
タオはゴニョゴニョと言ったが、シンヴァには聞き取れなかった。
「ん?なんだって!?」
「タオ……教科書読めない……」
「はぁ?お前七歳だよな?」
「誰もタオには、文字を教えてくれなかった……」
シンヴァは固まった。
(((「俺って、凄い順番を間違えて来たか~ あんなに、あんなに、セルグ師に頼み込んで、編入を許可してもらったのに~!! こいつの為に、3か月近く毎週末学び舎に呼び出されて、厳重注意され、すぐに木に登っては服を汚すタオの一週間分の洗濯に明け暮れていた、この三か月は何の為だったんだ~?」)))
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