第6話  メアリ・タオと銀の森

 メアリ・タオが銀の森に着いたのは、それから僅か、3日後だった。

 見た目5歳の子供に無理な旅をさせられないと、セルオーネの王都まで、馬で移動して王都の神殿の魔法陣から、一気に銀の森まで、移動したのだった。


 聖なる光の神、イリアス・ロイルの総本山で、リドムの銀色の葉が一年中枯れずに輝いて見えることから、通称銀の森の名で知られている所である。


 メアリ・タオは、初めて銀色に光るリドムの葉を見てビックリした。

 しかも、森のあちら、こちらから、タオに挨拶してくる声が聞こえてきた。

 よく見ると、その人たちは身体が透けていた。


「お……おじちゃん!!あれ!!」


 メアリ・タオはシンヴァの外套をつついて、指を差した。


「ん?ああ……風の精霊だな。ほほぉ……精霊が視えるみたいだな。良い子だ、良い子だ」


 シンヴァはタオの頭を撫でてくれた。

 これもタオには、初経験である。


 シンヴァは、旅を急にやめたので、神官のアルヴェルトとは、銀の森に到着した時点で別れた。

 シンヴァはメアリ・タオを連れて、学び舎への編入手続きを取ろうとしていた。


「学び舎?」


「ああ……ここで勉強して、立派な魔法使いになるんだ。」


「タオが魔法使いになるの?」


「そうだ、それから俺のことはシンヴァさんと言え。分かったな」


「うん、シンヴァさん」



 ここで待っていろと言われて、もう二刻は経つ。

 メアリ・タオは、だんだん不安になってきた。

 あんな風に谷を出て来たのだ。もう、谷へは帰れないだろう……


 溜息をついているタオの頭上に風の精霊が集まってきた。


 <珍しい気配の子ね。>


 <でも私、よく似た気配の人を知っている気がするわ。>


 <もしかして、あの人!?>


「ねぇ、あの人って、だ~れ~?」


 タオが上を向いて、精霊達に話しかけたら、精霊達は驚いて、四方に散って行った。


 一方シンヴァは、学び舎へタオを編入させようとして、四苦八苦していた。

 すなわちシンヴァに、魔法使いを見抜く目などないと認定されてしまったのだ。


「俺は、これでも上級の魔法使いですよ!!」


 学び舎の教師は言う。


「そうだな、この春にやっとロイル姓を貰えたひよっこだ。」


「だから、本当に精霊も視えてるし!!!」


「お前は知らんだろうが、学び舎は学費もかかるんだぞ。どこぞの砂漠の王族のお前には知らんことだろうが……魔法使いを一人、排出するにも金はかかる。普通は大御所や予見者が動くものだ。大体、お前のような若輩者にそんな大役が出来るのか?」


「それは、タオの学費を俺が面倒見ろってことか!?」


 教師はざっと、必要経費を書きだし、計算した。


「入学初年だけでこれだけだ!!まだ、禄も貰ってないお前には払えまい!!」


 シンヴァはクラッとした。ここまで高いとは……

 自分は、ナムラ砂漠のラ・ムウ・オアシスの族長の一族の出身で、学び舎にはいたずら盛りの兄と一緒に放り込まれたのだった。

 裏で、そんな大金が動いてたなんてことは知らない。


 魔法学に興味が出て、真剣に取り組んだら上級生よりも魔法の腕が良くなってしまった。

 その腹いせで死にかけたこともあったが、今は良き思い出だ。

 楽しかった学び舎に……メアリ・タオを入れてやりたいと思った。


「セルグ師、俺の禄でメアリ・タオの学費に当てて下さい!!」


「分割にせよというのか?」


 シンヴァは、自分から膝を折って、教授に嘆願した。


「ふん、分かった。その者の面倒はお前が見ろ。」


「ありがとうございま~す!!」


 シンヴァは、メアリ・タオを待たせておいたことをすっかり忘れていた。


「タオ~待たせたな!!これでお前も、学び舎の学生だ。あれ!?」


 タオは、シンヴァが待たせた樹の下で寝息を立てていた。


(「待たせ過ぎたかな?」)
















































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