第5話  メアリ・タオ、スカウトされる

 いつの間にか、メアリ・タオと銀色の外套を纏っていた二人の不法侵入者の周りには村人が集まっていた。


「タオ!!知らない人と話なんてするんじゃないと言ってあるだろ!!」


 言って来たのはメアリ・ウァムの父ちゃんで伯父さんのウィリーだ。


「おいおい、話しかけたのは俺ですよ。チビをあんまり叱らないでやってくれ!!」


 シンヴァはひょうひょうとして言った。


「旅人さんよ。何の用だい!?」


 イアンの父が、声を落として言った。


「俺たちは、銀の森から来た伝道師さ。別に、高い物を売りに来たのでもないし、交易を求めて来たのでもない。」


 そのぶっきらな物言いにシンヴァは、神官に頭をはたかれた。


「そんな言い方があるか!!失礼しました。皆さま、私は銀の森の神官のアルヴェルトと申します。ここには、光の神の教えは広まってますか?」


 村人たちは、おかしな顔をする。


「おや、知らないようですねぇ……」


「俺たちには、俺たちの神がいる!!他の神など受け入られる訳がない!!」


「それは、どのような……?」


 その言葉に村の男たちはキレた。

 一斉に投石を始めたのである。

 その石は、メアリ・タオにも向けられた。


「おい!!チビは関係ないだろ!!」


「そいつも他所者の厄介者だ!!」


「だから、こんな辺鄙なところの旅なんて嫌だったんだよ~~」


 シンヴァは一生懸命に投石から、タオを守ってやりながら言った。


「これも神の与えた試練である。痛みに耐えなさい。」


 アルヴェルトはシラッと言った。


「馬鹿を言うな!!チビ!!ちょっと、目を閉じてろ。」


 シンヴァはタオを外套の内側に隠しながら、タオの分からない言葉を言った。


 すると、風が巻き起こり地が揺れた。


 人々は、ビックリして呆然とした。


 タオもびっくりした。

 (「このおじさんがやったの? あの知らない言葉で……?」)


 当のシンヴァはあまり、魔法の効き具合に不満を持っていた。


「やっぱ、ここはロイルの加護のない土地だな……俺の力でこの程度とは……」


 村人は、二人の旅人に恐怖した。

 結界の張ってあったはずのこの谷に入り込み、先ほどの不思議な力で大地を動かし、風を呼ぶ。こんな者達に会うのは初めてであった。


「怪我の手当てをしてやろう……」


 そういったのは、メアリ・ウァムの父だった。一応、このカルガの村長だ。


「タオは、チビって名前じゃないからね」


 風がやんでシンヴァが外套を整えると、メアリ・タオが声を荒げて言ってきた。


「わりぃ、わりぃ、タオだったな」


 シンヴァは笑って言った。


 アルヴェルトとシンヴァは、ウィリーの家に向かって行った。

 シンヴァがタオと手を繋いでくれた。

 タオには初めてのことだ。ドキドキした。


 シンヴァは、やはりメアリ・タオと初めて会った時と同じ感覚になっていた。

 「(全身がピリピリする……こいつは……本当に先祖返りなのか?

 だったら、何でこんな光の神の加護もない土地に、こんな奴が生まれるんだ?」)

 

シンヴァの疑問は尽きない。


 アルヴェルトは、かなり大きな石を頭にくらったらしく、申し訳なさそうに、ウァムの母のエイミに手当をされていた。


 その隙に、シンヴァはこの谷から明日出ていくことを告げ、ついでにメアリ・タオを連れて行って良いか聞いていた。


「なんで、タオなんかを……まあ、妹がよそ者と作った厄介者だ!!食い扶持が減るから、家は助かるが。どーぞ、どーぞ!!ご自由に。返品だけはやめとくれよ。」


 伯父の言葉を聞いてタオは悲しくなった。

 従姉のメアリ・ウァムも父と一緒にうんうんと頷いている。


 ウィリーの言葉を聞いて、シンヴァは(「ヤッタ」)と思った。

 これは賭けだ。

 泣きべそをかいてるタオにシンヴァが声をかけて来た。


「メアリ・タオ、俺と一緒に銀の森へ来い。」









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