第3話 意外に効果的かも

 ところで、留学中に習慣になったことの一つに、相手の手を両手でぎゅっと握って話したりしてしまうというのがある。それが日本に戻ってからも大学でその癖が出てやってしまう。女ともだちには、なにこれ?といわれたり、男の子との友達にやってしまった時は「え?」「あ?」っと、気まずい思いをさせてしまったりする。イギリスでもそんなに普通のことじゃなかったと思うけど、友達グループにアメリカから来た女の子がいて、その子がいつもみんなの手を握って一生懸命喋るのが仲間内に流行って、それで友達グループの間で喋ってる相手の手をぎゅっと握る習慣が伝染してしまった。日常的にこれをやってしまうのが習慣になっていた。日本に戻ったのだから、この癖をぬかなければと思うのだけれど、あまりにも頻繁にしていたことなので油断するとつい出てしまう。


 その癖が家庭教師中にでてしまった。ちょっと難しめの入試問題を解かせてみたら、それは高三の範囲さえ超えているように思える設問だったんだけど、Rくんの解答は正解だった。思わず並んで座っているRくんの左手を取ってぎゅっと握って、「すごいじゃん。できてるよ!」と、やってしまった。

 急に手を握られてびっくりしてしまったのか、Rくんは顔を真っ赤にしてみるみる全身を緊張させている。しまった、手を握ってしまった、と思ったのだけど急に離すのもおかしいので、ぎゅーっと握ったまま解説を続けた。で、次の問題も滅多に見たことがない集中力で解いてしまった。今度は意図的に、また手を握って「すごいじゃん!」とやってみた。

 結局この日は、終始集中力が高くて調子が良かった感じだ。私に手を握られて嫌がっている様子もない。そうか。ここぞというタイミングで手を握ると、Rくんの集中力を増大させることができるのか。


***


 というわけで、以後、毎回、計画的にポイントを決めて手を握って解説する時間をつくることにした。そのおかげかわからないけど、期末テストに向けての勉強で、理解度と成績が急上昇した。

「期末テスト、1学期より成績が上がったらなんかご褒美するよ。何がいい?」

「え… あ。なんでもいいです。」と、顔を赤くするRくん。

文脈からして、こういう聞き方をするのはなにかあれなことを連想させてしまったかもしれない。しまった。と、私も恥ずかしくなった。動揺を隠すために、

「顔赤いよ、Rくん、変なこと考えてない?」と肘で押してリアクションしてしまった。


 そのとき、ふと**くんの股間に目が入ったのだが、もしかすると盛り上がってる??留学中、彼氏と一緒に勉強している時に、よく大きくなってしまったのを見てきたので、ズボンの上からでもなんとなく男の子が勃起しているかもしれないのがわかるようになった気がしている。気のせいかもしれない。勉強中にしょっちゅう勃起する元彼が例外的なだけだったかもしれないし。安易に仮説を立てるのは愚かだ。ましてや、Rくんが実際に勃起しているかしていないかを実証(=ズボンを脱がす)するわけにもいかない。でも気になって仕方がない。


 私の中に意地悪な気持ちがもこもこと湧き上がってきてしまった。英文エッセイの問題を解いてもらってる時、途中、横から覗き込みながらRくんのふとももに手を乗せて体重をかけてみた。Rくんがみるみる緊張するのがわかった。で、ズボンの盛り上がりを再観察したのだけど、変化はよくわからなかった。まさか触って確かめるわけにもいかない。こんなことをしたり考えたりしている自分に罪悪感が湧き上がってくる。

 英文エッセイの作文は非常に良くできていた。集中力もいつも以上に感じた。ちょっといけないことをしてしまっているという罪悪感があったのでほっとした。

 このきわどい指導法の成果なのか、そもそもRくんの学力が上がっているだけなのか。


***


 この日、家に帰ってからもRくんの股間の様子を何度も思い出してしまう。実際にはどうなっていたのか気になってしょうがない。想像の中でズボンのチャックを下ろして、ズボンを脱がせて、Rくんのそれを見つめるという妄想を何度もしてしまった。高校生の男の子のそれってどんなだろう?触り心地はどんなだろう。やっぱり欲求不満なのだろうか、私は。






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