第4話 冬季講習1日目:調子に乗りすぎた

  二学期の期末試験の点数がかなり上がった。私の教え方による成果だけじゃないだろうけど嬉しい。冬休みも年内の一週間、冬季集中授業をやってほしいと頼まれたので、もちろん引き受けた。毎日3時間、5日連続で年末、Rくんの家に通うことになった。


 全くわかってなかった微分方程式を理解させること、いい加減な理解しかできていない分詞構文を理解させること、あと、冬限定で、2次試験の世界史論述のための基礎固めもやることになった。


 平時より1時間長いので集中力を持続させないとだらけさせてしまうかもしれない。間に2回休憩を入れる形式でやることにした。というわけで、その時の会話の量も増えることになった。


 ちょっと前に仕掛けた話題をRくんが蒸し返してきた。

「女子校での女同士のエロ話って、どんなんですか?」

「あ?突然えっちな話ふらないでよ。こないだのあれね。友達同士でそういう話題が出た時、私、あんまり加わってなかったんだ、聞かないようにしたりして。恥ずかしいじゃん?だから、よく知らないんだ。」

「あ、そうなんですか・・・」

と、軽い落胆の顔色になったので、一つ追加ネタを投入。

「でもね、私の通っていた女子校ってね、というか私の友達グループだけかもしれないけど、友達同士でおっぱい揉み合ったりとかはあったよ。教室とかで後ろから抱きついて揉みながら、でけえなぁ、とか、ちっちゃ!とか。こんな感じで?」

と、私は自分の両方の手を両胸にあてて揉む仕草をしてみせた。

「私は友達のを揉んだりしなかったけどね。よく揉まれたりはしたけど。」

 するとRくん目が妙な光を放ったと思うと私の胸に視線を向けた。こわいぐらいマジな眼差しだった。

「やだ、みないでよ!もう、揉んでやる!」

と、椅子に座ってるRくんの後ろから、彼の両胸を両手で揉んだ。もちろん男子なので揉むものがついてない。硬い感じの触り心地のなかに、ちょっと筋肉を感じてしまった。

「あ、すいません・・・」

どぎまぎするRくん、かわいい。


「あ、あの、、、俺の高校も、男しかいないからか、友達どうして突然股間触ったりとか、あります、結構。部活とかでも。」

 と語った。

 あまりの不意打ちの話に、私は目が点になってしまった。そんな話聞いたことがない!私も目に妙な輝きを灯してしまったかもしれない。あるいはにやついてしまっていたかもしれない。ついこんな質問で返してしまう。

 「ええっ?まじ?男同士で触るんだ?股間って、ちんちんのことだよね?やばいじゃん。Rくんも触ったり触られたりするの?」

自分からは触らないけど、触られたりはするとのこと。

「まじ?触られるって、揉まれるの?握られるの?まさかこういうふうに動かしたりしないよね?っていうか、おっきくなったりしないよね。ナマで触るわけじゃないよね?」

と、調子に乗った私は拳にした手を上下する手つきをしてしまった。油断してガールズトークのノリになってしまった。男性器の話題が出るとついこうなってしまう。相手が男子高校生であることをうっかり忘れてしまった。見苦しい大学生のおばさんと思われたかもしれない。

 Rくんは、真っ赤になってうつむいてしまった。あわててあやまった。女子校のノリになってしまっても申し訳ない、と。

「あ、だいじょうぶです。ほんと、だいじょうぶです」

と。

かわいい!やっぱ、まじかわいい、Rくん。


 でも、もうちょっといじめたくなった。

「でもさあ、股間揉み放題なの?男子校。いいなあ。わたしも揉んでみたいな」とRくんのそこに視線を向けて見た。それに気づいてRくんは顔をさらに赤くした。耳まで赤かった。

 さらに追い打ちをかけるようなことを言ってしまった、「でも女に触られるのはやだよね?」と。

俯いたまま、あ、いえ、いやじゃないですけど・・・、とつぶやくRくんに、え、じゃあ、ほんとに揉んじゃうよ?いい?と、冗談でたたみかけると、あ、はい・・・との返事だった。


 もちろんそんな返事は成り行きのものであるはずなので、冗談だよ、とここで止めるべきだったのに完全に調子に乗りすぎていた私はRのスウェットの股間の一部を適当にキュッと二本指で軽くつまんだ。こともあろうに偶然、的確にもそれの先っぽを正確につまんでしまった。布越しの感覚でもそれがわかった。しかも固く勃起しているリアルな感触。

 しまった。私のこの行為は完全にセクハラだ。愚かなことをしてしまった。調子に乗りすぎた。猛烈な自己嫌悪がこみあげてきた。


「はい!おふざけは終わり。じゃあ次の問題ね」と、その場を切り抜けた。

 論述問題をやらせてみた。私にあんなことをされたのでショックを受けたかと心配していたが、Rくんは高い集中力を発揮した。20分ほどでかなりいい文章を仕上げた。このまま行ってくれれば成績はさらに上がりそう。まさか私の悪ふざけが集中力上昇に寄与したのか。そんなことはあるまい。


 帰り道、猛烈に反省した。あのあとちゃんと勃起はおさまっただろうか。彼氏にも男友達にも勉強中に勃起すると結構辛いと、そういう話をよく聞いてきたので気になってしまう。そもそもあの時なんであんなに固く勃起していたのだろう、Rくんは。自然の摂理なのか。


 帰り道、とにかく激しく反省した。と同時に指先に残るあの感触が私を妙な気分にさせた。


 

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