第3話

 うん? あれまって。彼女が聖女だという事は、不浄な霧を清めるのが仕事よね。それがどこかを私が精霊に聞いて、彼女に伝えなくてはいけないのでは?

 私が嫁ぐのはいいとして、辺境伯って言わなかった? そこって王都からかなり離れているのではないのかしら。


 「あの、陛下。私が嫁ぎ先へ行くのは今すぐなのでしょうか? 聖女に不浄の霧の場所を伝えてから発つのでしょうか」

 「それなら心配いらない。見えなくとも祈ればいいのだろう。心配せずに、余生を過ごすように」


 余生って! まるでもうおばあちゃんみたいな言い方をしなくても。

 というか、そんなんでいいなら私、今までわざわざ聞いた意味なくない?


 聖女が不浄な霧を清める事になっていたけど、実はそれ、私にも出来た。

 精霊がそう言うからやってみたら出来た。

 それを陛下に言えば半信半疑だったけど、王都の周りの森を清めてまわっていたんだよね。まあ人間には見えないから、形だけと思っているみたいだけど。


 もちろん私も人間だから見えはしない。けど、感じる事は出来た。

 どんよりとした空気が、澄んだ空気になる。そう感じていた。


 嫁ぐ前に、久しぶりに両親に会いに行く事になった。

 まさか、結婚相手が変わりましたと言う報告になるとはね。


 「ごめんなさいね、エスメラルダ」


 お母様が、私を見たとたん、そう言って泣き出した。

 私達は、抱き合う。王宮に行ってからは年に数度しか会えなかった。

 今度は、数年に一度ぐらいしか会えないかもしれない。ここも王都からは遠いけど、嫁ぐ先は更にもっと奥地。


 「お母様達のせいではありませんわ。あのわからずやのせいだわ」

 「まあ、誰が聞いているかわからないのだから、そんな言い方はしてはダメよ。思っていてもね。向こうに行ったとしても……」


 澄んだ青い瞳涙を溜めお母様はそう言った。

 あぁどうせ青い瞳ならお母様の様な澄んだ青が良かったなぁ。私の瞳は、深藍しんらん色。髪も同じ色。見た感じ、青よりは緑かもしれない。


 こうして私は、辺境へ旅立った。

 一週間の旅だったけど、楽しかったわ。だって、色々な精霊とお話が出来て、お祈りをしつつ移動したので、魔物にも遭わずにすんだ。

 王様は何も言ってなかったけど、精霊からは聞いていた。不浄な霧があると魔物が発生すると。もしかして、知らないとかないわよね? まさかね。

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