第2話

 王妃教育もそこそこに、私は精霊の事について勉強をさせられた。

 私は、『精霊つかい』らしい。

 その昔、ここは精霊と人間が共存する国だった。

 森には、不浄の霧が発生し、それがあると精霊は住めなくなる。それを『聖女』が清めた。

 だが人間には、不浄の霧は見えない。精霊に教えてもらわなければならなかったのだ。

 そして、年月が経つにつれ精霊の力が弱まり、人間と話す事もできなくなった。

 そこで、数十年に一度精霊が精霊の言葉を聞く者を選び、その者に伝える事にした。それが、精霊遣いだ。

 そう精霊遣いは、聖女と精霊の橋渡し役。


 私は、この話を聞くまで、王家の者は精霊の血筋だと思っていた。精霊国なんて名乗ってるから。どうやら精霊が住む国って事みたいね。

 聖女は、ある年齢にならないと、力を発揮できないらしい。そして、聖女には病気を治す力もあると言われている。

 だから聖女の誕生を今か今かと待っているみたい。


 やっぱりあの噂は本当だったのね。

 『聖女が見つかった』

 そう聞いた時は驚いた。でも、私には何も連絡が来ていない。


 「エスメラルダ・カヴァーミリ子爵令嬢。今を持ってセゼールとの婚約を破棄するものとする」


 思い出……いや、記憶を思い返していると、陛下がそう述べた。

 別にセゼール様の事に未練はないけど、どうせ婚約破棄をするならもっと早くしてほしかったわ。


 「そして、スピリナイト辺境伯に嫁ぐ事。約束通り、相手を探しておいた」


 探しておいたって……。


 「はい。承知いたしました」


 そう答える以外ないじゃない。嫌でもそこへ行かなくてはいけないなんて……。

 凄く年下の次は、凄く年上ってどうなのよ!


 「あぁやっと、あなたから解放された」


 後ろから声が聞こえたと思い振り向けば、セゼール様と見た事がない令嬢が立っていた。彼女が、聖女だろうか。

 こげ茶色の肩程の長さの髪。クリっとした髪と同じ色のこげ茶色の瞳は、私を見て少し細められた。そして、可愛らしい口の端をくいっと彼女は上げる。

 若い。と言っても、セゼール様と同じぐらいだろうけど。


 「彼女は、聖女、クリステル。彼女の方が私の伴侶にふさわしい。私は彼女と、婚約する。歳も同じだしな!」


 年齢の事を私に言われてもね!

 セゼール様は、陛下と同じ赤髪で、まだあどけさが残る顔つきだけど、そこが可愛らしい。私から見れば、まだまだ子供。

 二人はお似合いだと思うわよ。

 絶対にこうなるとは思っていた。相手が聖女になるとは思わなかったけどね。

 本当に無駄な12年だったわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る