祝福されし花嫁は精霊遣い

すみ 小桜

第1話

 「エスメラルダよ。そなたは、スピリナイト家へ嫁ぐ事となった」

 「え?」


 陛下に呼ばれたので、いつのも如く精霊の声を聞かせろとでも言うのかと思い出向けば、聞き捨てならない言葉を聞いたような。


 「あの、私の聞き間違いでしょうか。嫁げとおっしゃいましたか」

 「そうだ。私の弟のところだ」

 「………」


 聞き間違いじゃなかったぁ!

 いやいやいや。私は、この国レポナス精霊国の王子セゼール様と婚約中ではありませんか? それなのに、他へ嫁げと? しかも弟っていくつよ!

 あぁ~無性に叫びたい。

 あなたが無理やり息子と婚約させたのでしょうが~!!

 ――と。


 あれは、12年前の私が10歳の時だった。

 突然、私は王宮に呼び出された。私が精霊と言葉を交わせると聞いての事だ。それを確かめる為に呼ばれ、両親と共に上京。


 当時私は、精霊とは思わずにいた。だって、私が話していたのはだったから。それでも凄い事だったというのは、その時に知った。

 両親は、私が動物に話しかけているだけだと思っていたのだ。まあ普通そう思うのだろうね。

 私はその当時は、みんな話せると思っていた。

 両親に動物から聞いた事を言えば、『そうなの。よかったわね』などとちゃんと受け答えしてくれていたから不思議な事ではないと思っていたのだ。

 しかし周りは、子供の遊びだと思っていた。

 両親も本当に会話をしていたのかと、その時驚いていたのを覚えている。


 私の能力が本当だと知った国王は、こう言った。


 「私の息子、セゼールとの婚約を望む」


 ――と。

 普通は、王子と結婚出来るとなれば、大喜びだ。

 私の家は、子爵家。本来ならあり得ない。

 両親は大変驚き、なんとか断ろうとするもやはり無理だった。両親が断ろうとしたのは、もっとあり得ない状況だったからだ。

 婚約者のセゼール王子はその時、なんと3だった。7つも年下。

 年上なら反対をしなかっただろう。

 この国では、結婚ができるのが16歳から。つまりセゼール様が16歳になるまで私は結婚が出来ない。万が一、婚約破棄などになれば行き遅れで結婚出来ない可能性が高い。

 私、その時23歳よ。20代前半で子供を出産するのが普通の国で、ぎりぎりじゃない。

 それに、年ごろになったセゼール様に反対されそう。


 なんとか取り付けた約束が、もし万が一に婚約破棄になった場合は、王家で責任を持って相手を探す。というものだった。

 それで仕方なく頷くしかなく、私は7つも年下の婚約者を持つ事となる。


 それからは、王宮暮らし。

 そこから原始の森に連れていかれ、精霊の言葉を聞けと言われた。

 と言っても、王宮のすぐ裏手の森ね。

 この国の森全体が、原始の森だから。

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