【第3話】赤城部長

「うんんんんんんんん」


決まらない。演奏会の演出が決まらない。

最初の挨拶は突破した。ド定番の「みなさーん、こーんにーちはー!」でいこう。

問題は自分が司会をするところだ。

『パラダイスハズノーボーダー』、うちのとこで言われている、スカパラという曲の前に喋らなければいけないのに、、、。

「スカパラの曲わからへん、、これと森が燃えるやつしか知らん、、。」


しばらくして諦めてしまった。今日はダメだ。テレビを見ようと下に降り、テキトーな番組をつける。

その番組は所謂漫才コンテスト的なものだった。

自分はあまりテレビを見ないので、漫才も最近は見ていなかった。そもそもそこまで好きな訳では無い。

「やっぱり、こんなんより俺らの会話の方がおもろいわ、、」

呟くと同時に、吹奏楽部員のみんなを思い出す。


俺らがやったらどうなるんやろ、


そう思ってハッとした。そうだ、舞台上で軽い漫才をすればいいんじゃないか。絶対に面白くなる。

でも、それで本当に観客は楽しいのか。

またテレビに視線を移し、頼ってみる。

司会 「いかがでしたかー?」

芸人 「いやー、なんか久々に新しい漫才のタイプを見た気がしますわ。ええ。」

司会が、芸人に、インタビューしていた。


「ヤバい、、!降ってきた!いける!!」

たまにはテレビもいいなと思いつつ階段を駆け上がった。



「と、言うわけで。どう!?これ!ええやろ!」

翌日、土曜日の部活中に昨日のものを提案してみた。

四条 「これはおもろい、、さすが大智さん」

岡山 「インタビューも交えて、さらに漫才もする、、、おもろそうや!」

みんなの反応は上々。やっぱ凄いわ俺。

「じ、実はもう台本もかけてんねん。」

岡山 「ホンマに!?!?お前大智か!?」

峠  「逆に心配になる。」

なんとも言えない気持ちが生まれた。

「てか、もう2人は出来てるよな、多分。」


俺と同じ青一小出身の須江と北西に目を向ける。

今回は青一のみんなで演奏会の進行を務めることになったのだ。

「始まりと挨拶はそこ2人にお願いするわ。後で台本あげる。」

北西 「あっありがとう。でもこっちでも用意しちゃったんよなぁ、台本。」

須江 「まあ混ぜたりしていいようにするわ。」

予定外です。かっこいい感じやったのに。

かなわへんなぁ、、

「というわけで俺と漫才してくれるひーと!」


「「、、、、、、、」」


「、あれ、誰の声も聞こえへんけど、」

さっきの良さげな反応はなんだったんだ。でも俺にも最終兵器があります。

「な、岡山!」

あからさまに岡山の顔が歪む。

岡山 「絶対来ると思った、、いいよ、やろか。」

「お、おかやまさまあああああ!」

岡山 「あ、でも俺にツッコミさせてな。なんかお前、変なこと喋らせそうやし。」

「岡山様の仰せのままにぃ!」


とりあえず、演出の方は大丈夫そうだ。

スタンドプレイ(吹いている間に動くみたいな)もそっちの係に任せたし、あとは部員全員に伝えるだけだ。

と、ほっと一息つけるのも束の間。

青吹は嵐を巻き起こす、いい嵐も悪い嵐も。




赤司 「部長さん達、ちょっといい?」

今日はちょうど本番1週間前、少し焦ってくる時期だ。そんな時になんだというのだ。

赤司 「あのドラえもんの譜面、いつ届くんやろと思ってたんやけど、昨日届いてん。ライブラリアンの人らが今刷ってくれてるから、明日合奏するわ」

「「はい」」


はい??????

1週間前ですよ??完成できるのか、そんな短期間で。ちなみに、ライブラリアンは部の譜面を管理する人達のことだ。

峠  「あかしん、うちらのレベル分かってんのかなぁ、いけるんそんなん、、」

「はいって言うてもたやん、、やるしかないで。」

それだけ自分たちに期待を寄せている、と自分に信じ込ませて基礎練習を始めた。




数時間後、例の譜面が刷り終わったようで、ライブラリアンが各パートへ足を運んでいる。

森沢 「もう勘弁して、、」

「おつかれー。帰ってきたし、プルト決めよか!」

「「はい!」」

後輩の元気な声が飛んできた。自分たちとは違い、一つ下の学年は真面目な子が多い。

「そういえばこの曲、明日合奏なんで。」

わざと何も無いかのように言うと、パートのみんなは騒ぎ出した。それが面白くて大声で笑ってしまう。あかん。練習してないのバレる。

「んで、プルトどれがいい?今んとこみんな1個ずつやってるよな。」

松居 「先輩から決めてくださいよ。」

森沢 「んー、じゃあ大智にゆずるわ、これは。」

回ってきてしまった。こう、自由な選択肢を迫られるのは苦手だ。今回は後輩の目もあるし、誤魔化しとこう。

「俺じゃあ3rdいくわ。縁の下の力持ちってやつ」

森沢 「えっえぇ、じゃあ私2ndにしようかな。」

神木 「えっ、じゃあ俺ら1stですか、?」

「おん、これは1年2人に頑張ってもらおか。」

正直、こういう場こういう曲で後輩に舞台慣れして頂きたいと思っている。コンクールで吹く7分もあるような曲は、後輩には荷が重いだろう。

「じゃ、ちゃんと譜読みしてきてなぁ」






登場人物

2年1組 森沢亜衣(トロンボーン)

1年2組 松居智樹(トロンボーン)

1年1組 神木悠真(トロンボーン)

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