第13話
拓也【 あまり気にしない方がいいぜ 】
その日の夜、親友の拓也に相談に乗ってもらった。
拓也は俺が紅葉に告白される前から相談に乗ってもらっていた頼りになる親友だ。
佐藤 伊織【 そうかな? 】
拓也【 大丈夫だって 】
【 お前らはお似合いだよ 】
拓也のメッセージに不安が少し拭えた。
佐藤 伊織【 ありがとう、安心した 】
拓也【 がんばれ 】
◆
佐藤 伊織【 今度夏祭りあるんだけど一緒に行かない? 】
俺はすぐに紅葉にメッセージを送った。
俺たちは付き合ってから、まだショッピングデートしかしてない。だから、近い日に夏祭りがあったから誘ってみた。
でも、紅葉から返信は来なかった。
やっと来たのは夏休みが終わって始業式の後。
もみじ【 スマホ触ってなかった 】
俺は家で一人で弁当を食べながら花火の音を聞いた。
◇
紅葉は俺のこと好きなのかな?
二学期が始まってまたデートしているけど、相変わらずショッピングデート。紅葉が欲しいものを俺が買って渡す。
最近では、毎週一万円ちょうだいと言われて渡している。
「また明日、紅葉」
放課後になり紅葉に伝える。
「……学校で話しかけないでって言ったよね?」
「……ごめん」
そうだった。紅葉からの提案で、俺たちが付き合っていることは隠している。知っているのは拓也だけ。
俺は情けなくも泣きそうになりながら帰路についた。
家に着きそうになった時だった。
「あ、」
引き出しに宿題をいれっぱなしだったのに気づいた。仕方なく俺は来た道を戻った。
◆
行かなければよかった。
そう後悔した。
「たっくん、好き、大好き」
「俺もだよ、紅葉」
誰もいないはずの教室で、俺の彼女と親友が抱き合ってキスをしていた。
俺にはさせてくれなかったのに。
「伊織への態度どうにかならないの?可哀想じゃん」
「あれぐらいでいいのよ。あんなキモいの」
「酷いなあ」
「アイツはただの金づる」
「ひど」
「たっくんもアイツから貰った一万円使ってるくせにぃ」
「あはっ、お互い様か」
頭が働かなかった。
でも、なぜか俺の足は勝手に動いて教室に入っていた。
二人が瞬時に離れてこちらを振り向く。
驚いた表情をする二人。
「……最初から騙してたのか?」
否定してほしかった。
何かの間違いだって。なら、まだ赦せる。
まだ、壊れないですむ。
だから、お願いだ。違うって言ってくれ。
「はあ、そうよ。アンタのことなんて好きになるわけないじゃない。お金持ってたから付き合ったフリしてただけ」
「ま、俺もそんなとこ。伊織がお金持ってたから親友になって、紅葉に告白させた。お金助かったぜ」
一方は目さえ合わせず、もう一方は笑顔で告げる。
俺は立っていることさえできずに膝から崩れ落ちた。
「伊織、このことは誰にも言うなよ。言ったら、伊織の立場がなくなる」
「今日で恋人ごっこは終わり。やっと解放された」
二人が俺に言葉を残して教室を去っていく。
それから、しばらくは記憶がない。
気づけば俺は近所の公園のベンチに座っていた。
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