第2話

「たっくん。今日、私の家に来ない?」


「お、いいね」


 ……うんざりする。

 まだ、家の方がマシだ。


 人がたくさんいる教室で、それもわざわざ俺の視界に入るようにイチャつくカップル。

 どっちも美男美女。二人とも学年一のイケメンと美少女と呼ばれている。


 どうせ、コイツらのことだ。俺に見せつけてるんだろ?

 半年も経てば何とも思わないっての。


 ブブ


 ポケットの中でスマホが振動する。


 スマホを取り出し確認する。


美桜【 遅刻しちゃいました(・ωく) 】


 Limeというメッセージアプリに美桜から来たメッセージ。


佐藤 伊織【 起きるの遅いのと玄関のあれのせいだろ 】


美桜【 私の裸思い出しました? 】

  【 えっち♥️ 】


佐藤 伊織【 クビ 】


美桜【 ごめんなさいごめんなさい 】


佐藤 伊織【 というか、授業は? 】


美桜【 ナウです 】


 ……俺はそっとスマホをポケットにしまった。

 バイブがうるさい。


「伊織ー、なにニヤニヤしてんだ?」


 そんな、俺のところにたっくんこと、拓也たくやがくる。

 後ろに彼女の紅葉もみじを連れて。


「……してねぇよ」


 つか、何の用だよ。


「してたって。なにしてたんだ?」


 拓也が笑みを浮かべて俺に話しかける。


「……」


 俺は下を向き無視する。


「教えろよ?親友だろ?」


「ッ!!」


 反射で首を上げる。

 そこには、変わらず笑みを浮かべる拓也がいた。


「どうせエッチなものでしょ。キモ」


 後ろの紅葉が興味なさそうに吐き捨てる。

 お前にだけは言われたくねぇ。


「紅葉、その言い方酷くない?一応、元カレだろ?」


 拓也が笑みを絶やさずに紅葉を優しく叱る。

 でも、あれは叱ってるんじゃない。


「元カレじゃないし、ただの金づるよ」


 この言葉を引き出すため。


「うわぁ、酷い言われようだね、伊織?」


 今度はこっちに顔を向ける拓也。

 趣味の悪い笑みだな。


「お前も変わんねぇだろ」


 俺はただ一言、突き放すように告げる。


「ま、そうなんだけどね」


 俺の表情を見て満足したのか、拓也は紅葉を連れて自分の席に戻っていった。






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