何も思いつかない。

-N-

何も思いつかない。




 何も思いつかない。だから私はこれを書いている。何も思いつかないからだ。

 思いついていれば書いているものを、書けていないために、これを書いている。


 この場所は自由な白のスターライトで構成されており、何もかもが無重力である。そこにインクを一つ垂らしてみる。そうするとブーティックな音楽と共に重力が生まれる。世界はこうして白と黒と重力にあった。


 次に私は手元にあった『タイタン』という単語を創造した。タイタンは重力に逆らって立って歩いた。究極の疑問の答えを探し求める私についてこいと言わんばかりに。私は彼を記述することにした。

 彼はまず、山を越えた。海を越えて、川を越えていった。川というのはこの世とあの世を隔てる三途の川のようなものだが、どうやらタイタンには死生観とかそのようなものはないらしい。とにかくタイタンは全てを越えていった。その先にある、お前をかき立てるものはなんだ。


 タイタンはいずれ、リンゴの木にたどり着いた。それを根こそぎ引っこ抜いて、口に含んだ。タイタンはリンゴの種をぷぷぷっと吹くと、それらは地面に不規則に着地して、芽吹き、若木となって、やがて実を付ける大樹となった。


 そろそろ、仕事の時間だ。

 朽ち果てていくイメージとタイタン、りんご。

 またあえるさと、私はメモを閉じた。

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