第26話 私は

「みゅ!? みゅ? はい! なのです?」


「何で疑問形だよ」


 よかったいつもの笑顔なのです。さっきの笑顔は心臓に悪いのです! まだバクバクしているのです!


「さて、と」


「クレイさんは立ち上がれるのです?」


「ああ、何でだろうな。お前の夫だからじゃね?」


「みゅ!?」


「ははっ! 一々赤くなりすぎ!」


「もー!」


「城に戻るぜ」


「はい! なのです!」






 こうしてお城に戻ってきたのです。


 やはり、変態さんウルスさん、他の騎士団さんたち、王様王妃様、みんな座り込んで立ち上がれないみたいなのです。


「お、王子は立てるのですか?」


 ウルスさんが驚き、


「ああ、こいつの夫だからな」


 クレイさんが答えると、


「愛ねーん!」


 変態さんがくねくねしたのです。

 そんな変態さんを無視しつつ、クレイさんは王様と王妃様の元へ。


「クレイ……」


 王様がクレイさんを見上げたのです。


「怪我は?」


「ない……」


「そりゃ何よりだ」


「騎士団の働きのおかげだ……」


「——それだけじゃないのですー!」


 クレイさんの肩にぴょん! と飛び乗ったのです!


「騎士団さんたちもですが! クレイさんが密かに作った傭兵団! そして、共に戦ったクレイさん! みんなの力なのですー!」


「そんな事をしていたのか……」


「まぁ、な。俺なりに動いていたんだ」


「そうか……」


「そうなのです! だから! 国のために動いたクレイさんを! 現王の血が通っていないとか! あの物語のように肌が黒いとか! 色んな何なんだを取っ払い! クレイさんを! 家族だと! 王家の一員だと認めるのですー!」


「しかし……」


「もー! しかしも案山子かかしもないのです! では! どうしたら認めてくれるのです!?」


「そう、だな。嫁いでくれたそなたが、小人族ホビトンの姫君、ならば」


「——男に、人間族ヒュームに、二言はありませんね?」


 私はクレイさんの肩の上に立つと、王様を見据えたのです。


「おいマル、いつもの口調はどうした」


「いつもの口調が何なのかはわかりませんが、クレイさん、ごめんなさい」


「ん?」


「最初、騙されたと言いましたが、私もあなたを騙していました」


「は?」


「“マル”というのは、愛称みたいなもので、そう呼んでいただいた方が、親しくなれる。だから、皆さんにそう呼んでもらっています?ですが、私の本当の名は、“マウル・ラ・リーリャ”」


「マウル・ラ・リーリャ……。“ラ・リーリャ”!?」


 王様が後退りしたのです。


「“ラ・リーリャ“とは、だ、代々! 小人族ホビトンの長を務める家系の名では!」


「そうです」


「長の娘ってことは、俺たちでいう姫みたいなもんか」


「はい」


「ま、まさか、クレイの嫁がっ……」


「男に、人間族ヒュームに、二言はありませんね?」


「はっ、はいぃ!」


「では、夫の、クレイさんの待遇を改めてください。まず、あの隔離されたような寂しい部屋。あの場所をやめ、広い場所に移してください」


「いや、別に俺あそこ気に入ってるけど。一人で楽々できるし」


「……では、式典とか、家族の催しものにも、クレイさんを参加させてください」


「いや、別に参加しなくていいし。俺、堅苦しいの苦手だから」


「……なら! せめてクレイさんに王子らしい格好を!」


「いや、俺、こういうラフな格好が好きだけど」


「——あんまりなのです!」





⌘⌘⌘⌘


 あとがき。


 次回! 怒涛の最終話です!


 これまた長くなりそうなら二回に分けますが、とにかく最終話です!




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