第22話 怪しい匂い、ぷんぷんなのです!

「ドキドキしたけど、サッパリしたのですー」


 先にお風呂から上がり、着替えてテーブルの上で待っているのです。

 クレイさんは、私が騒ぐから面倒だと脱衣場で着替えてくれているのです。


 サッパリしたところで、改めて考えてみたのです。


 騎士団は、クレイさんの味方だけど、表面上は王家絶対。クレイさんは王位継承権がないから、王家の者という扱いではない。だから、守る必要はない、ということなのです……。


 さっき見たクレイさんの体は、確かに変態さんが言っていた通り、鍛えられていて引き締まっていたのです。ドキドキして恥ずかしいのに、見ていたいという感覚は、初めてだったのです!


 そして、体中にあった傷痕。クレイさんの苦労を物語っていたのです。


「……むー」


 騎士団がダメなら、さらに上の大臣さんに掛け合うしかないのです! 


「国を守る! となれば! 防衛大臣さんなのです! とぉ!」


 テーブルから飛び降り、


「モー子!」


 光る球体を喚び出し、そこから私の分身モー子を呼び出したのです!


「モー!」


「クレイさんに心配かけるといけないから、私の代わりにここにいて欲しいのです!」


「モー!」


「では! 大臣さんに会ってくるです!」


 とたたー! と走り、いつの間にかクレイさんが作ってくれていた、私専用扉で部屋を出たのです!


「着替えたぞー、……ってマル?」


「モー!」


「うおっ! って、お前がいるってことは……、また勝手に飛び出したなー」


「モモー!」


「ったく……」




 ⌘⌘⌘




「今度は大丈夫なのですー、また図書館で調べるのですー」


 図書館の方にてくてく向かっていると、


「これはこれはマスケラ防衛大臣ではありませんかー、ご機嫌麗しゅう」


「みゅ?」


 どこかで聞いたセリフが聞こえてきたのです。声がした方を見ると、


「あ! あの人は!」


 太陽市場ソーレ・メルカートでクレイさんが睨んだ怪しげな商人さんがいたのです!

 ……ん? でも、ここは王城。あの商人さんが易々と入れるような場所ではないのです。


「…………」


 怪しい匂い、ぷんぷんなのです! 足元まで近づくのです! たたたー! と二人の足元へ走ったのです!


「今日は何が入った?」


「これです、“ラジ化鉛”です」


「ほぉ、よく手に入ったな」


「入手経路は秘密という事で。これを大臣がお持ちの大砲の砲弾にすれば、着実に爆轟ばくごうを起こします」


「ほほぉ」


「——……」


 「ほほぉ」、ではないのです! どちらもパーチェ平和条約で禁止されている代物なのです!


 まず、大砲! 

 大量殺戮兵器に分類され、戦争を招くと、生産も所持も禁止されているのです!


 そして、ラジ化鉛! 鉛のラジ化物として爆薬として使用されていたのですが! 鉛の環境汚染が問題とされ、禁止されているのです!


 その禁忌二つを! 合わせようというのですか!? 防衛大臣のあなたが!?


 またもや由々しき事態なのです!


目視録ヴェデーレ・オッキオ!」


 私は目をかっと開き、一部始終を録画し始めたのです!


 これは、小人族ホビトンしか使えない魔法で、自分の目を記録媒体とする便利な魔法なのです!


 そして、この防衛大臣の悪事を! 止めてやるのです!

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