第3章 面倒くさがりで、優しくて、ちょっぴり意地悪で自信家。それが、私の自慢の旦那様! なのです!

第19話 ムカプンな人なのです!

「そんじゃ、俺は帰るからな」


 クレイさんは、宙ぶらりんな私を胸ポケットに入れたのです!


「んっんっんっー。クレイ王子ぃー、今度アタシとー、共同大浴場に——」


「断る」


 クレイさんは踵を返し、スタスタと訓練場を後にしようしたのです。


「んー、つれない。ま、でも、幸せそうでよかったわー」


「ですねー」


「ウルス」


「はい!」


「クレイ王子と! その奥方マル様に! 敬礼!」


 変態さんの声が響いたので、クレイさんの胸ポケットから出て、肩まで登って見てみると、二人は開始合図の時みたく、顔の面で剣を立てていたのです。


「感謝! なのです!」


 私も空気剣を持ち敬礼したのです!




 ⌘⌘⌘




 お城へ戻ってくると、


「これは、汚泥ファンゴ、じゃなくて、クレイ。何だか久しぶりだなー」


 サラサラ金髪に青い瞳、白い高級そうな金の装飾が施されたベストとスーツの、いかにも、俺、すごい偉いんだぞ敬えー! オーラを出している人が現れたのです!


「……兄貴」


 なんと! クレイさんのお兄様なのです!?


「さっき試合で大活躍だったな。観てないけど」


「——……」


 観てないなら言うな! なのです! 

 耳と尻尾が出そうになったので、急いでクレイさんの胸ポケットに戻ったのです!


「まぁな」


「これで評判が良くなるといいな。どうでもいいけど」


「——……」


 ボシュン。


 この人は! いつも最後にわざわざ余計な一言をつけるのですー! ムカー! なのですー! 

 胸ポケットでジタバタしていると、クレイさんが落ち着けと言わんばかりに、また旋毛つむじをぐいぐいと押してきたのです!


小人族ホビトンから嫁ももらったみたいだし、これで父さんや母さんに認めてもらえるといいな。そんな訳ないけど」


 そう言って、お兄様はすれ違いざまにクレイさんの肩をポンと叩き、嫌味ったらしい笑みを向けたのです。


 そして、城から出て行ったクレイさんのお兄様。


「んー! ぎゃー! なのですー!」


 胸ポケットから勢いよく飛び出したのです! そして、クレイさんの肩の上に乗ったのです!


「どうした、何か生まれたか」


「怒りが生まれたのです!」


「肩の上で暴れんな。尻尾がくすぐってぇ」


「異父兄弟! でも家族! 肌の色は違う! でも家族! なのですー!」


「あーはいはい」


「クレイさん!」


「どうしたよ」


「他に家族はいるのです!?」


「ああ、弟がいるぜ」


「よし! なのです!」


 クレイさんの肩から飛び降り、


「絶対にさっきのお兄様と同じく、ムカプンな人なのです! お説教してくるのですー!」


 そして、お城の中へ走ったのです!


「あ、おいっ、マル! ……弟の部屋、教えてねぇのに大丈夫か? ……それに、あいつは、弟は、玩具ジョカット好きだからな……、嫌な匂いがするが、俺は部屋に近づけねぇし。……はぁー、全く、困った奥さんだな」


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