第14話 参った、ぎゃふん、と言わせるのですー!

小人族ホビトン? ああー、ウチが人を派遣する代わりに嫁いできた奴か。……ってぇことは、クレイ王子の嫁さん!?」


「そうなのです! ちょっと待つのです!」


 がしっとこの人の足首にしがみつき、登っていくのです! 筋肉さんだから、体に凹凸があり、なんだか掴みやすいのです!


「うんしょっと」


 ようやく肩まで辿り着いたのです。背が大きいから、大きな山を登山した気分なのです。


「その軽鎧けいがい! 体格! 大きく立派な剣! 騎士団の方とお見受けしたのです!」


「まぁ、正解だ」


「しかも! かなり高い役職とお見受けしたのです!」


「それも正解だな。副団長だ」


「では! 挑戦状なのです!」


 びしぃ! と副団長さんを指したのです。


「挑戦状?」


「はいなのです! クレイさんは! 旦那様は騎士団にも負けないくらい強いと! 証明してやるのです!」


「……王子の許可はよ」


「大丈夫なのです! うーんしょ! いでよ! 私の分身!」


 両手を上げると、光が放たれ、宙に球体を作ったのです。そこからひょこっと、淡く光る薄茶の子牛が現れたのです!


「クレイさんに伝えるのですー! 騎士団に参った、ぎゃふん、と言わせるのですー!」


「モー!」


 宙を走りながら、私の分身モー子はクレイさんの部屋に向かったのです!





 ⌘⌘⌘





「あ? 光る子牛?」


『クレイさん!』


「うおっ! その声はマルか」


『はいっ、マルなのです! その窓に置いてある剣で試合をするのです!』


「試合? 誰と?」


『騎士団の方となのです!』


「はぁ!?」


『要件は以上なのです! では!』


「あっ、おい!」





 ⌘⌘⌘





「これで! 大丈夫なのです!」


「……少しも大丈夫じゃないと思うがな」


「早速やるのですー!」


「全く話を聞いてないしな……。オレの一存では決められねぇんだよ。団長に聞いてくるからちょっと待ってろ」


 副団長さんは私を下ろすと、図書館を出て行ったのです。






 しばらくすると、頭をかきながら戻ってきたのです。


「どうだったのです?」


「二つ返事でいいってよ。なんか、気持ち悪いくらいウキウキしてたな……」


「よかったのです!」


『……おい、マル』


 宙に浮く、光る球からクレイさんの声が聞こえたのです。


「みゅ?」


『この子牛、消してねぇから、俺にも話が筒抜けだぞ』


「はっ! 忘れていたのですー!」


『勝手に話を進めんな』


「でもっ! だって! このままだと!」


 あの物語みたいに、悲しい思いをしてほしくないのです……。

 家族は、みんな、仲良く、なのです……。

 血の繋がりとか、肌の色とか、家族には、そんなの、関係ないと思うのです……。


『はぁー……。わかったよ』


「みゅ……?」


『ウルス』


「はっ!」


『日時と場所は』


「明日! 昼過ぎ! 騎士団訓練場にて! と、団長より承っております!」


『わかった。対戦相手は』


「はっ! わたくしウルス・ソルダートがお相手致します!」


『りょーかい。楽しみにしてるぜ』


「はわわっ! はわわー! モー子! 消えるのですー!」


 光る球を両手で包んで消すと、クレイさんの部屋にいるモー子も消えたのを感じたのです。


「ふぅー、なのです」


「……お前、すげぇな」


「みゅ?」


 ウルスさんがなんかキラキラした瞳で、私を見つめていたのです。


「あの、クレイ王子がタジタジで、言うこと聞くなんて。そんなことできる奴、初めて見たぞ」


「ふふんっ! 何てったって! 私はクレイさんの妻! だからなのです!」


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