第5話 破廉恥なのです!
「じゃあ、その果物はどうすんだよ」
「宝物にするのです! つるつるキラキラ! 宝石みたいなのです!」
自分の体くらいある果物を両手で持ち上げたのです。
「腐るぞ」
「うぐっ……。では、食後のデザートにするのです! 食べ歩きから帰ってきたから、ゆっくり食べるのです!」
そーっとお皿に戻したのです。
「では! 行くのです!」
町に出るので、目立つと悪いからまた魔力を耳と尻尾に集中させ、隠したのです。
「はいはい」
クレイさんは私の服の後ろ襟を摘むと、ワイシャツの胸ポケットに入れたのです。
「は、
「何が」
「体が密着する胸ポケットに入れるなんて!」
「直に肌は触れてねぇだろ」
「た、体温が伝わってくるから!
「はいはい」
「はいはいではないのですー! 出すのです! みゃ! 服が掴みづらいのです!」
「ははっ、暴れんなって、くすぐってぇから」
断崖のようにクレイさんの服を掴んで登ろうとしたけど、上手くいかないのです! それどころか頭を押され、押し込まれたのです!
「クレイさん! こういう
「ねぇよ」
「何故なのです?」
「俺の式典なんか開けば、全国民に汚れが広がるから穢らわしいんだと」
「——もー!」
ボシュン。
「あー! また出たのですー! もう面倒くさいから耳と尻尾は出しておくのです! もー!」
「つーわけでな、俺んとこ来た時点で、結婚成立なんだよ」
「わかったのです! クレイさん! いえ! 旦那様!」
「お、おう」
「怒ったらさらにお腹が空いたから! 早く
「ははっ、食欲には勝てねぇってか」
「私は欲には忠実なのです!」
「いいことだ。じゃ、行くか。奥さん」
「はいなのです!」
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