エピローグ?

エピローグ 本当に、これで終わり?

 平凡な日常だ。冷たい秋の雨が俺を濡らす。俺としたことが、傘を持ってくるのを忘れるなんて。暁刀神社の前を通りかかって、ちらりと境内を見る。どうせ今日も暇だ。少し立ち寄ってみるか。


 あの日も、こんな雨が降っていた。あの不思議な七日間からもう数ヶ月経つ。もしかしたら、あれは夢だったのかもしれないな。感情の無い俺が、感情を教えられ、取り戻したあの時。今頃、あいつらはどうしているだろうか。俺は、境内の奥に広がる、色づいた広葉樹の森林に足を踏み入れた。


 ここで、数ヶ月前、俺は魂の迷宮に迷い込んだ。魂の迷宮、あれは一体、なんだったんだろうか。未だに謎が多い。燃える刀や管理者たち。気になる。だが、それは生きている人間が足を踏み入れていいような疑問では無いのかもしれない。それでもやはり、気になる…。ここ数ヶ月間、たまにそのことを考えていた。


「唯我…。」


 脳裏に一瞬、声が聞こえた気がした。


「助けて、唯我…。」


 この声は、頼果…?その時、脳裏に突然、ボロボロに傷ついた頼果達が倒れている姿が見えた。一体何が起きているんだ?


 そうだよな、まだ、何も解決していないよな。こんな所で止まっているなんて、俺らしくないよな。折角出来た縁だ。頼果も、湊も、伊織も圭も、秀も、他の参加者達も、まとめて全員救い出す。今度は、今度こそ、俺だけじゃない。みんなで帰ろう、この世界に。方法はどうするかって?大丈夫だ、ここには俺がいる。


 俺は覚悟を決め、そっと目を閉じた。しばらくは何も起きなかった。けど、俺は雨に濡れながら待ちつづけた。必ず、そっちに行く。そして、全ての謎を解いた暁には全員で帰る。


 突然、眩暈がして俺はふらついた。来た。目を開けても、目の前は真っ暗のままだった。胸に痛みを感じる。段々意識が遠のいていく。さあ、第二ラウンド開始だ。俺の、俺達の本当の闘いは、ここから始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る