第32話 元の時代に帰りましょう

 タイムマシンが動き出す。

 今まで恐竜時代にいたなんて嘘みたいだ。

 窓の外を見る。ティラノサウルスの親子が起き上がろうとしているのが見えた。


「ちょっと寄り道しましょうか」


 タイムマシンは浮き上がって、森の上を飛び始めた。やっぱり、これはただの車じゃなかったみたいだ。


「見てください」


 さっきいた場所からもうかなり離れた場所を歩いていたのは。


「あっ」


 テリジノサウルスの親子だった。


「大丈夫そうですね」

「よかった……」


 直太は呟いた。

 テリジノサウルスの親子はちゃんと歩いている。親にもケガは無いようだ。ヒナの方もまだ歩き方はひょこひょことしているがなんとか大丈夫みたいだ。

 先生は最後にテリジノサウルスたちを見せてくれたのだ。


「ありがとうございます」


 直太はお礼を言った。嬉しかった。最後にあの親子に会えて。

 森が開けて、目の前に草原が広がる。


「わあっ!」

「すごい」


 思わず歓声を上げる。

 恐竜たちの群れが、そこにはいた。のんびりと歩いていたり、池から水を飲んでいたり、走って移動していたり。

 映画で見たような風景だ。


「あ、あ! あれはアンキロサウルス! トゲトゲかっこいい! う、うわー! オルニトミムスが群れで走ってる! イグアノドン! やっぱり鼻の上にツノついてない!」


 友則の興奮っぷりは最高潮だ。帰れるとわかってからこうして恐竜を見ているのは、さっきまでと気分が全然違う。


「では、帰りましょうか」


 先生が言った途端、タイムマシンがぐっと加速した。流れるように景色が過ぎる。

 一瞬だけ光の中を通り抜けた。そんな気がして外を見た。

 外の景色は、もう変わっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る