第30話 タイムマシンでお迎え
確かに先生だ。崖崩れの時にはぐれたときのままの格好をしている。遠足に出掛けるみたいなアウトドアな服が、車のデザインと全く合っていない。
「みなさん、無事でしたか。よかったです」
先生がほっとしたように言う。
「目の前で崖崩れに巻き込まれて、その場所から跡形もなく消えてしまったんです。本当に心配しましたよ。ああ、よかった。みなさんが無事で……」
「先生! 全然、無事じゃないですよ! 今もティラノサウルスに襲われてたし!」
先生の言葉を青葉がさえぎる。
「それは大変です! どこかケガをしましたか!? 食べられたりしていませんか!?」
先生が駆け寄ってきて、直太たちみんなの体をばばっと見る。本当に心配してくれているみたいでは、ある。ずっと探してくれていたんだろうか。それにしても、どうしてここがわかって、しかもここに来られたんだろう。
友則も入江も、何が起こったかわからないという顔で先生にされるがままになっている。
「見たところケガは無いようですが、大丈夫ですか?」
「あ、ハイ。危ないところで先生がティラノサウルスをはねてくれたから……」
先生の勢いに押されて、青葉が答える。
本当に間一髪だった。ほんの少し遅かったら、直太たちはもう食べられていた。考えただけで怖い。
「というか、先生! だから! なんで、ここで、車!? ティラノサウルスをはねるとか、どんだけ頑丈な車!?」
もはや青葉はパニックだ。
ティラノサウルスをはねたはずの車には傷一つ付いていない。
わけがわからないけど一応、助けに来てくれたのは本当にありがたい。
まずは、
「ええと、とりあえず助けてくれてありがとうございます」
「いえいえ」
直太が言うと、先生は微笑んだ。それから言った。
「この車はですね……」
なんだかその先は言いにくそうだ。
「この車は?」
ずいっと青葉に詰め寄られて、先生は口を開く。直太も気になる。
「うーん。ここまで来て隠しても仕方がないですね。この車は、まあ簡単に言えばタイムマシンなんです。ああ、宇宙船でもありますけどね。わかりやすく言えば、この星ではUFO、未確認飛行物体でしたっけ。けれど今はタイムマシンと呼ばせてください。その方がかっこいいですよね」
「え? ええっ!?」
「……」
「タイム、マシン……これが、ですか?」
「…………」
「まあ、まずは乗ってください。ティラノサウルスは確かにはねましたが、ケガはさせないようにしたつもりです、しばらくは大丈夫ですが、起き上がる前に帰りましょう。ここは危ないですからね」
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