第25話 恐竜時代で指切り
「よし、約束ー!」
青葉がぴこんと小指を立てる。
直太は入江と友則と顔を見合わせる。青葉となんだけど、女の子と指切りするってちょっと恥ずかしい、気がする。もしかして、青葉だから?
入江と友則も、ちょっと苦笑いしている。
「しないの?」
「……する、けど」
代表して直太が答える。
よしっと、心を落ち着けて直太も小指を立てる。やれやれという感じで友則も。ちょっと気まずそうな顔して入江も。
四人だから指を絡ませるのは難しい。お互いの小指をちょん、と付けて。
「じゃあ、行くよ。せーの」
青葉が合図をしてから。
「「「「指切りげーんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った」」」」
元気よく言ったり、小声で言ったりしながら四人で指切りした。
こんな場所で指切りした小学生は世界で初めてなんじゃないだろうか。そう思うとちょっぴり笑えてくる。
「どしたの?」
そんな直太に気付いた青葉が声を掛けてくる。
「恐竜時代で指切りなんかしてる小学生なんて僕たちが初かなって思って。そしたら、なんかおかしくなっちゃって」
「そう、かも。私たちってすごい?」
「すごいよ」
あはは、と青葉も笑う。
「確かにそうですね。こんなところで指切りなんて」
「かもな」
いつも無表情に近かった入江まで、なんだか微笑んでいる。
だいふくの話をしてよかった。
みんな元気になってくれた。
話を振ってくれたのは直太じゃなくて、青葉だけど。
「でも、すごいですね」
友則がテリジノサウルスを見上げる。
「あのヒナがあんなに大きくなるんですよね」
「本当だね。見つけたのがまだ小さいうちでよかったよ。じゃなきゃリュックになんか入らなかったし」
直太はヒナたちを見た。足がちょっぴり上手く動かなくて、ひょこひょこと歩いているのが一緒にいたヒナだ。
だいふくは元の飼い主の元に帰れなかったけど、あのヒナは親と兄弟の元に帰れてよかった。少しさみしいけど、本当によかった。
「直ちゃん、大丈夫?」
声を掛けられて振り向くと、青葉が心配そうな顔で立っていた。
「どうして?」
「なんだかさみしそうな顔、してたから。だって、直ちゃん、あの子のこと可愛がってたでしょう? 少しの間だったけど、それでも」
「大丈夫だよ」
直太は微笑んでみせる。
ちょっぴり大丈夫じゃないけど、青葉が気付いてくれたことが嬉しい。青葉はおおざっぱそうに見えるのに、昔から直太の気持ちにはすぐに気付くところがある。こういう弱っていたりするときに声を掛けてくれる。
だけど、今は弱っている場合じゃない。
まだ青葉は信用してくれていない。だから、直太は言う。
「大丈夫。でも、ありがとう青葉ちゃん。さあ、僕たちも行こう」
「……うん!」
青葉もにこりと笑った。
「あの子も元の場所に戻れたんだもんね。私たちも戻らなきゃ!」
テリジノサウルスは、もう直太たちに背を向けてヒナたちの元に向かおうとしている。
これ以上見ていると、余計にさみしくなりそうだ。
「行こうか」
直太も後ろ髪を引かれつつ、テリジノサウルスに背を向けようとしたときだった。
何かが、目の端に写った。
体が硬直した。
何かはわからなくても、怖いものだと感じたからだ。
それは、テリジノサウルスの親子に向かっていた。
「危ない!」
思わず直太は声を上げた。
テリジノサウルスが振り向く。長い爪を、刀を振るようにぶんと振った。それ、をかする。それ、が一瞬飛び退く。
止まったことで姿がよくわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます