第23話 再び肉食恐竜!?
しばらく森の中を歩いていたら、池になっているような場所に出た。そして。
「わっ」
友則が声を上げた。その視線の先。
「!?」
直太の身体がこわばる。
大きい。
ふさふさと羽毛が生えた大きな生き物が水を飲んでいた。
「恐、竜?」
思わず声に出てしまう。
「しっ。……まだ気付いてない。そっと逃げよう。大きな音を立てないように」
小声で入江がささやくように言う。
昨日のヤツのことがある。入江の言ったとおり、直太はそっと後ずさりする。青葉もだ。
それなのに、昨日の夜あんなに泣いて心細そうにしていた、真っ先に恐がりそうな友則が怯えた様子を見せない。
それどころか、キラキラと目を輝かせている。
「あれって……、もしかして」
友則が呟く。
恐竜が立ち上がる。
「に、逃げなきゃ」
言ったのは青葉だ。
「待ってください!」
友則が言った瞬間、恐竜が立ち上がった。
でかい!
言葉が出なかった。
直太が住んでいる二階建ての家くらいある。それより大きいかもしれない。大きな鳥みたいに見えるけど、すごく凶悪そうな爪が付いている。すごく長い。あれでなぎ払われでもしたら一撃で吹っ飛びそうだ。
「ほら、友則くん。友則!」
突っ立っている友則を青葉が引っ張っている。
「直太さん、もしかして!」
「え、なに?」
逃げようとしていたところに声を掛けられて、直太は友則の方を向く。
「見てください!」
大きな恐竜は大きな爪を使って、近くにあるシダみたいな植物を引き寄せている。そして、そのままもしゃもしゃと食べ始めた。よく見たら口が鳥のくちばしみたいになっている。そうとわかればでっかい鳥みたいだ。
「そう、しょく……」
思わずへたり込みそうになった。それくらい力が抜けた。
あんなにでかくて草食なんて反則だ。
「よかった~」
青葉も同じみたいでへにゃへにゃと座り込んでいる。
「大丈夫? 青葉ちゃん」
「うん、ありがと」
声を掛けると、青葉が力が抜けたように笑った。
「直太さん、ヒナ、いますよね」
「え、ヒナ?」
友則に言われて我に返る。
「リュックの中で寝てると思うけど」
ずっしりと背中に重みを感じるからそのはずだ。
「出してあげてください」
「あ、うん。水も飲みたいだろうしね」
「そうじゃなくて」
友則はなんだかとても焦っているように見える。それでも直太はヒナの負担にならないように、そっとリュックを下ろす。せっかく治ってきたのにまた怪我をさせてしまったら大変だ。
リュックを開けると、ヒナが顔を出して小さく鳴いた。その時。
「え」
草を食べていた恐竜がこっちを向いた。
ヒナもしきりに鳴き出す。
「まさか」
「そうです。その爪、見てください」
「爪、あ……」
鳥のヒナにしては長すぎると思っていた爪。
直太は目の前にいる大きな恐竜を見上げる。
凶悪そうな爪。
それに最初は鳥と間違えたのも仕方ない、このくちばし。
「まさか、この子の、親?」
直太は呟く。
大きな恐竜がずしん、とこちらに向かってきた。地面が揺れる。
「あれはきっとテリジノサウルスだと思います。爪を見てください。すごく長いですよね」
「本当だ。似てる、かも。羽毛の色も……」
親の方が色が濃いように見えるけど、前にテレビで見たパンダの子どもも産まれたばかりの時は親よりも色が薄かった。
「あの長い爪でエサになる葉っぱを引き寄せて食べるとか言われているんです」
「へー、すごい」
さっきまで必死で逃げようとしていた青葉も、興味深そうにテリジノサウルスを見上げている。
「て、こっち向かってきてない?」
「そう、ですね」
「う、うん」
地響きを立てて向かってくる姿は草食とわかっていても、ちょっと怖い。
ヒナはますます鳴き出す。そして、直太の腕の中でじたばたと暴れ出した。
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