恐竜時代を歩こう
第21話 出発だ!
翌日、朝になったら友則はなんでもないような顔をしていた。だから、直太も何も言わないでいることにした。ちょっぴり眠いけど、友則が元気になったならそれでいい。
ヒナも昨日より元気そうに見える。
入江が持っていたペットボトルに砂とか石とかを入れて作ったろ過器のおかげで水が飲めるのもありがたかった。ここには自販機もコンビニもない。水が飲めること自体がすごいと思うのは初めてだ。
後は、夜の間に恐竜に襲われなかったことにも感謝する。
「ジョロキアスプレー、効いたのかな」
「多分! 作ってきてよかったね」
青葉に言うと胸を張っていた。
「じゃあ、どこに行けばいいかわからないけど行ってみようか!」
「どこに」
思わずツッコミを入れたくなる青葉の言葉に、直太は文字通りツッコミを入れる。
「とりあえず、進む!」
「遭難したときは、あまり動かない方がいいんだけど」
「そうなんだ」
入江の言葉に、ダジャレのつもりなのか普通の答えのつもりなのか青葉が返す。
直太の方を見て、友則がちょっぴり笑う。直太もそれに答える。昨日の夜、言っていた。青葉がいれば辛くなんてならないって話。やっぱり合っていた。
青葉はどこにいても青葉だ。ただそれだけで、なんとなく安心できる。こんな非常事態なのに。
「なるべく安全な場所にいて、体力を温存しておくことが大事なんだ。怪我でもしたら、何か来たら逃げることも出来なくなるだろ? 幸いここには水もあるし」
「そっかー。でも、じっとしてて大丈夫なのかな。動いてた方がなんとなくいい気がするんだよね。どこに行けば帰れるかもわからないけど、それでも」
「……動いてた方が、不安がまぎれるのもわかる」
入江が、うーんと首をひねる。
「俺、遭難したことはないけど、もし遭難したらって父さんにも色々聞いてたんだ。でも、ここではその常識もきっと通じないな……」
「じゃあ、行く?」
「そうしよう。じっとしてた方がまた昨日のヤツが追ってくる可能性もあるし」
昨日のヤツ。
入江はぼやかして言ったけど、きっとみんなが思い出した。思い出しただけで足がすくむ。
「よ、よし。じゃあ、出発しよう! 昨日と違う方向に! どっちかわかんないけど!」
「それは多分向こうかな。太陽の位置でわかるから」
「はー」
思わず息を漏らしてしまったのは青葉だけじゃない。直太もだ。そんなことまでわかるなんて。
昨日のヤツから少しでも離れられるならちょっと安心だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます