第18話 交代で見張り
バナナはなんとか無事だった。皮をむく前に止めることが出来たのだ。青葉が悲しげな顔をしてバナナを見つめていたけど、仕方がない。
「で、さ」
気を取り直した青葉が、ぴこんと人差し指を立てる。そして、言った。
「ここってやっぱり、恐竜時代なわけ? 昼間も話そうとしたら邪魔されちゃったし」
「……邪魔って」
そんな可愛らしいものだったかと思わず言いたくなる。話をしようとしたらティラノサウルスに追いかけ回されたのは確かだけど。
「本当に恐竜時代でしょうね」
青葉の疑問にツッコミではなくきちんと答えたのは友則だ。
「恐竜の種類とか生えている植物から考えると、白亜紀後期じゃないかと思います」
「そんなことまでわかっちゃうんだ。やっぱり友則くんはすごいね」
ほへーと青葉が感心している。
「本を読んだら書いてあります」
もっと得意そうにするかと思ったけれど、友則はぼそぼそと言っただけだった。
「え、でも今は持ってないよね。覚えてるだけですごいよ~」
青葉が感心したように言っても、友則はぎゅと小さくなって体操座りをしている。
「大丈夫? 疲れた?」
「あ、ええ、はい。そうみたいです。なんか、疲れちゃって」
「今日はもう寝た方がいいかもね。ここで寝ても大丈夫かな」
「大丈夫、とは言えないけど体力も回復した方がいいのは確か」
青葉に聞かれて、入江が答える。
「火は絶やさないようにした方がいいかもしれない。あと、見張りで誰か一人は起きてた方が安心かも」
「確かに」
こくこくと青葉が頷く。
そんなわけで、交代で眠ることになった。
寝る前に青葉は自作していたジョロキアスプレーをキャンプ地の周りに撒いていた。少しでも効果があることを願う。
なんだか現実じゃないみたいだ。昨日の夜までは自分の部屋のふかふかのベッドで寝ていたのに。いつも自分のベッドのことをそんな風に思ったことはなかったけど、いざ地面で眠るとなるとその表現がどうしても浮かんでくる。
途中で起きるのが面倒だから、と言って青葉が最初に起きていることになった。小さい頃、青葉と一緒にお昼寝したことがある直太は知っている。
青葉はすごく寝起きが悪い。
だから、最初に起きていることにしたのは大正解だ。
入江にも目配せしたらなんとなくわかってくれたみたいだった。後の三人の順番はじゃんけんだ。
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