恐竜時代キャンプ
第16話 ようやく一息
夜になった。
ゆらゆらと揺れる火を見ているだけでこんなに落ち着くなんて知らなかった。
直太たちはみんなでたき火を囲んでいる。
「キャンプファイアーみたいだね~」
昼間のことも忘れて青葉はくつろいだ様子だ。
火を付けたのはもちろん入江だ。何かあったときのためにマッチを荷物の中に入れていたみたいだ。直太たちはそんなもの用意していなかった。入江はすごい。
青葉は木の棒を手でくるくるして火を付けるのはやらないの? なんて言っていたけど。
マッチに火が付いたからといって、すぐにたき火になるわけではなかったことを思うとかなりすごいと思う。
まずは乾いた苔(普通は乾いた草なんかを使うらしいけど、ここは恐竜時代で草がないから)に火を付けた後に組んだたき火に燃え広がらせる。
それも、ただ木を積むだけじゃきちんとたき火は燃えないらしい。
まずは細くて小さな枝をテントの骨組みみたいに組んで、その上から段々太い枝を同じように組んでいく。
たき火なんて枝を集めて火を付けさえすればすぐに出来るものだと思っていた直太は、てきぱきと木を組み上げていく入江の様子をぽかんと見ていた。
「ねーねー、普通に火を付けるだけじゃダメなの?」
聞いたのは青葉だ。
「ぽいぽいって木を重ねてマッチで火を付けちゃえばいいんじゃないの?」
「それだとちゃんと燃えないんだ」
「そうなの? 乾いた枝なんだしすぐ燃えるんじゃない?」
まずは火をおこすところから始めようと、みんなで枝を集めたのだ。それも生えているものではなく、折れて下に落ちている乾いた枝。湿っていると火が付かないのは直太にもわかった。ただ、色々な太さの枝を集めて欲しいと言われたのは最初よくわからなかったのだけど。
実際、木が燃えていく様子を見ていてようやく理解出来た。
マッチさえあれば、乾いた苔には簡単に火が付く。組んだ木の一番下に置かれた苔から、まずは細い木に火が燃え移る。それから、段々と太い木へと燃え移り上へ。面白いように火は移動して、やがてたき火になった。
ぱちぱちと音がして、なんだかいい匂い。焦げ臭いとかじゃない、落ち着く香りだ。
「なんで木を組んだんですか?」
友則が炎を下からのぞき込んでいる。
「空気の通りがいいように。空気が通らないと燃えないから」
火の様子を見ながら入江が答えた。
「あ!」
青葉が声を上げる。
「もしかして、理科の実験でやったことあるやつかな。ビーカーの中に火の付いたマッチ入れて、フタをすると火が消えちゃうってやつ。でも、それって六年生でやるやつだよ。私もこの前知ったばっかりなのに。すごいね、入江くん」
「ん。その実験は知らないけど、キャンプではそうしてるんだ」
なんて答えながら、入江は横に置かれた枝をたき火の中にちょいちょいと足している。軍手もちゃんとはめている。めちゃくちゃ用意がいい。
感心してしまった。
同い年の入江がこんなに色々なことを知っているのはすごい。入江がいなかったら、絶対に火もおこせなかった。
そんなわけで、直太たちは無事にたき火を囲んでいるのだった。
水気のあるところは濡れて体力が奪われるからダメだと入江が言ったので、乾いた場所を探してこうして休んでいる。最初はすぐに水がある場所の方がいいんじゃないかと思った。だけど、確かにお尻が湿っていたらなんだか落ち着かなさそうだし、恐竜が水を飲みにでも来たりしたら、また逃げなくてはいけない。
だから、入江の言っていたことはきっと正しい。なんというか、入江はサバイバルに慣れている、という感じだ。
「はああ、今日は疲れたね」
青葉がぐんと伸びをする。そんな青葉を見ていると普通のキャンプをしているような気分になってくるから不思議だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます